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第三:脱兎が如く2

<耐久値19%>しかない、この『(いにしえ)から伝わりしマジシャンの一張羅(いっちょうら)』こと……、誰かの私服を着て。俺は今――。


 お花畑の中に隠れている――。木を隠すなら森の中……、赤い花柄のアロハシャツを着たうさぎを隠すならお花畑の中。我ながら……天っ才。


 あと――、天井の穴は本当に助かったなあ。どこの誰か存じませんが、ありがとやした!


◇◆


 空が高い……。澄み渡るあおを仰向けにみていると、白い月があるじゃないか。遥か上空を旋回しているのはトンビか? 奴ぐらいでなければ俺を見つけることは出来(でき)まい。――と、思ったのもつかの間。


「うさちゃん、みーーーっけ!」


 頭上から顔を覗き込んできたのは、小学校低学年ぐらいの大きさしかない女の子だった。慌てて起き上がり反対方向へ『脱兎(だっと)』――。


 俺は……向かった先に仕掛けられていた、落とし穴に落ちてしまった。穴の上では小学校高学年ぐらいの女の子二人とさっきの子が『ハイタッチ』している。


 まさか――、あんな三人にまんまと捕まってしまうなんて……。


「あっ」


 ふと、胸ポケットにトランプが四枚入っていたのを思い出した。マークの色が反転している不思議なカード……。


◆◇ 時はお花畑の中に戻る ◇◆


「つーか、マジシャンのくせに大富豪でもしてたんか?」


 2が四枚……『最後に革命して上がろう』っ手か。笑わせる……。アロハシャツの胸ポケットには、マークの色が赤と黒の反転した2のカードが四枚入っていた。


 てか、あの帽子とアロハシャツとトランプって……。口からめっちゃトランプ出してた――、あの人だろっ!!


◇◆ 時は落とし穴の中に戻る ◆◇


 「えっと、効果は……?」


<効果:使ってみてのお楽しみだよ~ん! 種明かしするわけないじゃ~んw ねえ、どうなるか知りたいんでしょ?さあ、使いなよー。さあさあ>


「これ作ったやつ腹立つ~。何度、見返しても変わんねえ」


 とりあえず、チャンスは引き上げられた時だ――。


「うさちゃーん、逃げようとしても無駄だからねぇ~。私たちのペットになるか晩御飯になるか……わかるよね?」


――晩御飯⁈ おいおい――、なんであんな見た目で恐ろしいこと言えんだよっ。ぜってぇあの二番目に大きい子、中身は人間じゃねえだろ!


「うんっ! うさちゃんわかった! 足をロープで結ぶから、ぼく逃げられない。それでいいでしょ? だからここから出して~ 暗いの、怖いよ~」


 ――もちろん、噓である。隙を見つけて、首元をこのトランプで掻っ切る! 弱肉強食……、俺はガキ共のペットでもエサでもない。ましてや――、お前らはゲームでもこっちは生きてんだ。……ざけんな。


 カードを「ペロッ」と舐めて、左内ポケットにしまった。


◇◆


 もう少しだな――。落とし穴の上では、既に一番体の大きな女の子がひとり仁王立ちして……、見えたのはスカートの中の下着だった。


 とっさに顔を上げ目を閉じ、穴から出た後のシミュレーションをする……。足から引き上げられているから、もちろん頭に血が上ってほとんど回らない。――が、これから青春時代を迎えるだろう女の子のパンチラに興奮する俺ではない。 


 そもそも――。『ネカマ』という言葉が深く浸透した現代において、小学校高学年の女子を設定するやつなんてシスコンのおっさんかご本人だッ!


 背中の擦れる感触が無くなり……、ロープを引き上げる小さなノックバックが止まった――。今だっ!


 目を開くとベストな高さに首があった。ふっ、首元がガラ空きじゃないか……。左の内ポケットからカードを取りだし――、チェックメイトだ。俺は血が苦手なので目を閉じた。


 ……おかしい、切った感覚がない。なるほど……、切った感覚もないほどの切れ味だったか……。


「きゃーーーー!!」


 すまんが、残りの二人も――、そう思い目を開けた時だった。


「うさぎさんが私にプレゼントーーーーーッ!!」


 あれ? 首が繋がっている……。「ふんっ、ふんっ」なるほど……。この短い腕では届かないわけだ。……っあ。カードが取られてしまった。


「わあ~おねえちゃんばっかりずるい! ひとみもっ、ひとみもっ」

「だ~めっ! こ・れ・は! おねえちゃんが! うさぎさんからもらったのー」


 自称おねえちゃんのスカートを、ひとみが引っ張っている……。


「そんなこと言わずに。最初にうさちゃんを見つけたひとみにあげなよ、かずねえ」

「ふたばは口出ししないでっ」

「はああ⁈」


 どうやら、あげたわけでもない一枚のカードを巡って争いが起きている……。


「おねえーちゃんのばああかああ」

「だいたい、初めに見つけた人に権利あるようにしようって言ったの、かず姉だよね?」

「プレゼントは別です~」


 一番小さい子は泣きだし、二人は口喧嘩を始めだしてしまった……。


「出たよ……、いつもの後出しじゃんけん」

「ばあああかあああああああああ」


 一番小さい子がさらに泣き声をあげる――。と、ここにはいない大人の声が聞こえた……。


『あんたたちいい加減にしなさいッ!』


 その声が宙に響くと――、三人姉妹の居た所には<ログアウトしました>の表示だけが残っていた。


 また、カードの上では<効果終了>が出ると、光の欠片となって消えた。


「えっ? 今のが、効果――⁈」

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