第自由語:不名誉な二つ名は『駆けまわる最凶の白兎』
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「ハクト~、何とかならない~?」
「だから、俺はクエストなんか――」
ありすからクエスト参加の申請を断りながらログハウスに入ると、見覚えのある女魔法使いがソワソワした様子で立っていた……。そして俺を見るなり――。
「きゃああああああああ! ファイヤーボーーールッ!!」
「ぎゃああああああ」
俺は急いでありすの後ろに隠れる――。が、火魔法は発動しなかった。
ふう……あぶなかった、あぶなかった。一安心して、ありすを見上げると拳を握っている。そうだ、この不届きものにガツンと言ってやれ――。そう思っていたのだが、現実は違った。
「あんた……、相棒の私を肉壁にしようとしたでしょおおおおお」
そう言って、俺の脳天にゲンコツを食らわすのだった。まだ朝食も食べてないのに……。
「……ありす先輩、相棒になった白兎って。今、街で噂になってる……『駆けまわる最凶の白兎』だったんですか?」
かけまわる……何だって……。ありすと目が合ったがピンと来てないようだった。
「「……はい??」」
◆◆◆◇
ありすの後輩の話は朝食をしながら、テーブルを囲んで聞くことになった。現在、高校三年生のクレアの話によると……。
イベントクエスト時の俺の害悪な動きと、『アロハシャツ専門店』が俺たちの来店を最後に店を閉じたままであること……。金熊都市で不滅要塞と呼び声高い『オール・ニード・キル』の店主にブレスを使わせたなど……。
プレイヤーたちの間では……歩く天災、禍を呼ぶ白い悪魔などと、呼ばれ……。
巡り廻って、現在は『駆けまわる最凶の白兎』と不名誉な二つ名で呼ばれているらしい……。
そして、ありすの後輩のクレアもパーティメンバーには不意打ちをしたと思われ、それが原因でクビになったらしい…………。なるほど……。俺は心の中でクレアにドンマイを送った。
「って、ありす先輩! 一緒にいて大丈夫なんですか? 何か悪いこと起こったんじゃないですか?」
おいおい……、人を疫病神みたいに言うなよー。ご本人、ここに居ますけど……。と、思っているとありすが口を開いた。
「あははははははは、ハクトが『駆けまわる最凶の白兎』ってウケるんですけど。ハクトったら『俺はすでにFIREして一生安泰だ』ってクエスト断るぐらいよ」
ありすはそんな噂話を笑って吹き飛ばした。……ってFIREが何のことか分かってたんじゃねえか。
「それならなおさらっ! 三人でクエストクリアしましょ!」
どうやら、ありすの変なスイッチが入ったらしい……。
「「えええええええええ」」
この時はさすがにクレアと息が合った。