表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/24

第Ⅺ:アニキ

 ログハウスの裏手にある湿地帯(しっちたい)を二時間…………。キンクマに肩車され超えると――、街が見えた。


(きり)の先には、こんな街があったのかー」

「ずら……やっとついたずら」


 そうなのだ。ログハウスの裏手(うらて)はどこまで続くかもわからない湿地帯となっていた。またその先は、来るものを帰らぬ者へと変えるほどの深い深い霧が広がっていた。


「――おっ! キンクマじゃねえか」

「…………ホントだ! キンクマだ」


 街に入ると――――どうやら、キンクマの知り合いが居合(いあ)わせたようだ。


「マジか! キンクマが帰ったぞ!」

「みんな――!キンクマが帰ったぞ」


 あれ? なんか騒ぎになってないか? いや……、むしろキンクマのことを誰もが知っている様子だぞ。


「みんなただいまずらーっ! 金熊鼠族(キンクマネズミゾク)第一王子(だいいちおうじ)のキンクマ。ただいま帰還(きかん)ずらー!」


 キンクマは最後の「ずらー」と同時に『ロッキー』のガッツポーズをすると――、拳を上げたまま周り始めた。


 肩車されたままの俺は「そんな急に周り始めると落ちるからー」と、必死にキンクマの顔にしがみつくのだった。


◆◆


「ほうほう、ハクトとやら。うちのキンクマがお世話になっているようで、大変感謝する」


 そういったのは、この街『金熊都市(キンクマシティ)』の(おう)だった。


 宮殿(きゅうでん)に招かれた俺とキンクマは『どんぐり』の換金(かんきん)を待つ間、王の書斎(しょさい)に呼ばれた。


 にしても……、この(がら)はどう見ても虎柄(とらがら)――。熊の要素どこにいった――、あ。よく見れば柄の色は熊と同じか……。


 ぜってえ――、このキャラ考えたやつ「あ……この手があった!」みたいな発想(はっそう)してんだろ――。俺はそう思いながら、顔をそらして(こぶし)(にぎ)った。


「ところで、ハクトとやら…………」


 キンクマの王が俺たちを書斎に呼んだ……、本題(ほんだい)を伝える気だ。


「…………いや。また次会った時でもよかろう。(せがれ)とは、これからもよろしく頼む」


 そういうと……、深く頭を下げるのだった。


◆◆


「合計で……、今回の換金額(かんきんがく)は『\380,160-』になります。キンクマ様、記録更新おめでとうございます」


「ヤッターずらっ!」

「…………マジかよ」


『どんぐり』の換金によって、俺たちは小金持(こがねも)ちになった――。そして、俺はある事に気づく……。


「って、キンクマ…………。もしかして俺たち、一生安泰(いっしょうあんたい)じゃねえか――」


 そういった俺に、キンクマが指を振りながら答える。


「チッチッチッチー。ハクトも気づいてしまったようずらね……。『どんぐり拾い』こそが、この世界で食いっぱぐれない絶対的な法則であることを!」


 そう言い放ったキンクマに、俺は心の底から「アニキーーーーーーッ!!」と叫ぶのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ