13/40
13.Y染色体
彼の腕を掴んだ。
黒ずくめの彼は、振り返り、私を強く抱き締めた。抱き締めてくれた。
確かに、貴方の言う通り、貴方は演技が下手だね。
彼の良い香りを胸いっぱいに吸い込むと、監禁されていた頃。彼が、私を、箪笥の中のブローチのようにしまいこんでいた頃を思い出す。
彼に夜這いした夜を、思い出す。
あのブローチのように、私は、ずっと彼に磨かれたかったのだ。
あのブローチのように、私は、ずっと彼を磨きたかったのだ。
「二人で一緒に帰ろう」
そう言いながら彼の手を掴み、彼に、自らの喉仏を触らせた。