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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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93/116

第93話 戦死の覚悟

 人造勇者の集団が現れた後、彼らとはまた別の軍隊が続々と登場する。

 彼らは此度の戦いへの参加を表明した志願兵だった。

 立場は冒険者や傭兵から聖職者、騎士、盗賊まで多種多様である。

 志願兵の顔には緊張や不安が浮かぶも、一様に決意を固めている。

 この場において怯えや後悔を見せる者は皆無だった。


 シエンは未だにケビンと言い合っていた。

 仕方ないので代わりにソキがリリアに解説をする。


「ご主人様は志願兵と契約魔術を交わしています。逃亡や命令違反、裏切りを防止するものです」


 リリアが目を丸くした。

 彼女は志願兵とソキを交互に見る。


「彼らは拒まなかったのですか?」


「契約魔術を拒否した者は追い返していますから。ここに集ったのは捨て身で戦える者だけです」


 ソキは当然のように述べる。

 彼女の口ぶりは冷静で、一切の感情を排したものとなっていた。

 故にリリアも気軽に話を遮ることができない。

 皮肉や辛辣さの中に人間的な情も垣間見えるシエンと違い、ソキはとにかく徹底して合理的で冷酷だった。


 次にソキは志願兵の一角を指し示す。

 そこでは揃いのローブを着た六人の子供が待機していた。

 子供達はそれぞれ異なる色の杖を携えており、リラックスした様子で会話している。


「あの子供達は六色術師と呼ばれる若き英雄です。実験体にされていたところを勇者に救われ、現在では比類なき武功を立てています。彼らの連携は並の人造勇者すら凌駕しますよ」


「そんな逸材が……」


「別に珍しくありません。人造勇者の影響力は何も戦場だけではありません。数多の記憶を引き継ぐ彼らは、様々な人間の成長を促すのです」


 説明を聞く間、リリアは何か言いたげな表情をしていた。

 しばらく黙っていた彼女だが、意を決した様子で恐る恐る尋ねる。


「ソキさん。あなたも人造勇者なんですよね」


「ええ。それが何か」


「……いえ、大丈夫です。すみません」


「そろそろ出陣します。あなたもご主人様と契約魔術を交わしたそうですが、祖国に遺書は置いてきましたか。これより先は生存率が著しく低い戦いとなりますから、くれぐれもご注意ください」


 そう言ってソキは足早に魔術工房へと戻る。

 一度も振り返らず、辺りが凍えるほどに冷たい気配だった。

 リリアは彼女に返す言葉がなく、口を噤んで見送ることしかできなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おお…そこでこの子たちが…死なないでくれ!頼む!
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