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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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92/116

第92話 歴戦の勇者

 人造勇者の容姿や装備は様々だった。

 唯一の共通点は白銀の頭髪で、髪を持たない者やそもそも人間でない者も、全身のどこかに白銀の部位がある。

 勇者達は魔術工房のそばまでやってくると、整列を解いて思い思いに寛ぎ始めた。


 和気あいあいと喋る姿は楽しげだが、リリアは静か仰天していた。

 彼らから立ち昇る尋常でない質量の魔力に気付いていたのだ。

 魔族すらも凌駕する圧倒的な力を前に、リリアは冷や汗をかく。


「す、すごいですね……」


「稼働させた人造勇者のおよそ八割……全員が固有能力に目覚めた猛者だよ。計画始動の初期から戦ってきた者も多い。相手が未知数である以上、これくらいの備えは必要だろう」


「ここにいない勇者は何を?」


「別の任務さ。魔王の偵察だったり、他の地域の防衛や諜報をさせている。決戦の隙を突かれて各国を攻撃される恐れがあるからね。僕はそういうことにも気が回るのだよ」


「ありがとうございます、助かります」


 二人のもとに勇者ケビンが歩いてくる。

 ケビンはシエンを見て皮肉っぽい笑みを見せた。


「あんたも同行するんだってな。やっと重い腰を上げる気になったのか」


「君達の活躍でいよいよ最終段階に入ったからね。感謝しているよ」


「そいつは良かった。運動不足なら俺が守ってやろうか」


「僕を庇ってまた死ぬつもりかね」


「馬鹿にすんな。あの時から俺は強くなったんだ。賢者のお守りもやってやるよ」


 自信満々に言い放ったケビンは、続けてリリアを見る。

 彼は気さくな調子で手を差し出した。


「ケビンだ。よろしく」


「リリア・フォムンです。あなたが噂の……」


「ああ、元人間の人造勇者だ。他の奴らと違って物覚えが悪いけどな」


 握手をしつつ、ケビンは自虐的にぼやく。

 一方、シエンがリリアのために補足説明をした。


「ケビン君は人造勇者の中でも指折りの実力を持つ。それも才能ではなく、常軌を逸した自己鍛錬で上り詰めた男だ。学が無く礼儀もなっていないが信頼はできるよ」


「おい悪口聞こえてるぞ」


「聞こえるように言ったからね。悔しかったら勉学も努力したまえ」


「分かった分かった、魔王をぶっ殺してからな」


「ふむ。男に二言はないね。誓約魔術で約束を結ぼうか」


「いいぜ、上等だ」


 言い合う二人を見てリリアは苦笑する。

 下らない会話で盛り上がる光景は、とても魔王討伐前とは思えなかった。

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