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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第86話 賢者の報告

 魔術工房に到着した王国の使者リリアは、ソキによって客間へと通された。

 そこでは賢者シエンが書物を開いて待っていた。

 リリアはそそくさと対面に座る。


「失礼します」


「久しぶりだね、リリア君。最後に会ったのは何年前だろうか」


「三年前です。調査書の提出で訪ねました」


「ふむ、そうか」


 相槌を打ちながらも、シエンの興味は別のところにあった。

 彼はリリアの頭部に注目しながら指摘する。


「白髪だらけになっているね。心労かな」


「はい……色々とありまして」


「要職は大変だね。同情するよ」


「ありがとうございます。シエン様はお元気そうで何よりです」


「僕は自由な研究を謳歌しているからね。おかげで心身ともに若くいられる」


 優雅に微笑するシエンは本心から発言しているようだった。

 リリアはその姿を羨ましく思った。

 そして窓に映る自分を見て、小さくため息を洩らす。

 彼女の心境をよそに、シエンは話を本題へ移した。


「さて、今回の用件は何かな」


「魔王討伐の目途について確認に参りました」


「それなら二週間後に決行するよ。部隊の編制がようやく完了するところでね」


「えっ、本当ですか!?」


「僕は嘘を言わない。期日までに準備は終わるだろう」


 断言するシエンの目には活力が溢れていた。

 計画の集大成ともいえる段階に入り、彼の知的好奇心とモチベーションは天井知らずに高まっている。

 それは狂気と混ざり合い、対峙する者が気圧されるほどの凄みと化していた。

 実際にリリアは息を呑み、背もたれいっぱいに仰け反っている。

 ソファに座っていなければ後ずさっていただろう。


「君から魔王討伐を依頼されて八年が経過した。待たせてしまってすまないね」


「とんでもないです! シエン様のおかげで魔王軍の侵攻を食い止めるどころか、今や土地の奪還まで進んでいます。感謝こそすれど、文句を言うはずありません!」


「王国の貴族はそうでもないようだがね。僕を技術独占で糾弾する者や、人造勇者を拉致して内部構造の解析を試みる者がいるらしいよ」


「そ、それは……申し訳ありません」


「使者に過ぎない君が謝らなくていい。ただ共有しておくべきだと思っただけさ。別に怒っているわけでもない。想定内の展開だ」


 皮肉と辛辣さを含ませつつ、シエンは笑みを深める。

 自分の国の横暴がひとまず容認されたことで、リリアは胸を撫で下ろした。


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