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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第85話 止まらない歩み

 ミランダは客間の扉を開けた。

 振り返った彼女はシエンに告げる。


「さようなら。もうここに来ることはないわ」


「それは困るな。高強度の魂による不死身は分析のし甲斐がある。君が死体になったら運び込まれるよう手配しておくよ」


「ふふ、勝手にして」


 ミランダは魔術工房を去った。

 迷いのない軽やかな足取りだった。

 窓から見える後ろ姿を一瞥し、ソキは静かに述べる。


「彼女は大丈夫でしょうか」


「問題ないさ。僕への憎悪を燻ぶらせながらも、ハロルドの跡を継いで悪を狩り続ける。いい人生じゃないか」


 相手から向けられる感情を理解しつつ、一切合切を無視して役割に向き合う。

 それが賢者シエンのスタンスだった。


 微笑するシエンは資料を読み直す。

 彼の関心はミランダからハロルドへと戻っていた。

 戦闘記録に目を通すシエンは、意外そうな声で呟く。


「まさかハロルドが死ぬとは思わなかった。彼の生命力は勇者の中でも突出している。魔王軍の幹部は手強いようだね」


「この段階で討伐できたのは幸運ですね」


「ああ、内部から攻撃されるのが一番厄介だ。今後は感知が得意な勇者も用意しよう」


 ノワールの他にも、魔族が人間の勢力に紛れているという情報が出ていた。

 その事実が広まってしまったことで、人々の間には疑心暗鬼が生まれている。

 派遣された勇者が魔族を特定して討伐するも、根本的な解決には至っていない。

 戦禍は既に王国だけに留まらない状況だった。


「今回の一件で、周辺国にも魔族の被害が出た。しかも都市が丸ごと崩壊した。魔王軍との戦争を他人事で眺めていた者達も焦り出したことだろう」


「最前線を担う王国への援助が始まったそうです。ご主人様と面会したいという声も多数あります」


「どうせ自衛用の勇者が欲しいだけだろう。すべて断っておきたまえ」


「承知しました」


 シエンは資料を置いて頬杖をつく。

 その双眸は狂気めいた知欲を滾らせていた。

 立ち上がったシエンは客間を出て廊下を早足で進む。


「奈落の領域が取り除かれ、魔王への道は切り開かれた。暗躍する幹部も倒している。戦争は佳境に達したと言えるだろう」


「決戦の準備を進めますか」


「そうだね。この半年で魔王討伐の精鋭部隊を揃える。長きに渡る戦いを終わらせようじゃないか」


 不敵に微笑むシエンは、底無しの探求心に取り憑かれていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] むぅ残念 次章で魔王まで行ってほしい。結城さんの作品で魔王討伐まで行くのは半分くらいだから。まぁそれがいいんだけど
[気になる点] 流石に死んでしまったらどうにも出来なかったか… ちょっと『あしゅら男爵』ルートレベルくらいの希望はあるかと思ってたんだが
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