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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第81話 優しい愛

 ミランダはその場で立ち尽くす。

 彼女の脳裏は葛藤で満たされていた。


 今の自分に何ができるか。

 本当にやり遂げられるのか。

 もっと別の方法があるのではないか。

 できればやりたくない。

 でもこれしかない。


 ミランダは悩む。

 足は動かず、考えだけが延々と巡り続けた。

 全身はかつてなく震え、呼吸すらも忘れるほど考え込んでいた。

 そうして悩み果てた末に彼女は呟く。


「——私がやらないと」


 ミランダは両手に魂のエネルギーを集め、幅広の刃を形成する。

 刃は彼女の魂を糧に燃え盛っていた。

 頷いたミランダは駆け出して、街を破壊するハロルドに跳びかかる。


「ハロちゃん! こっち向いてっ!」


 動きを止めたハロルドにミランダが刃を叩き込む。

 交差する斬撃が触手をまとめて切断した。


 ハロルドは泣き笑いのような声を上げて怯み、すぐさま残った触手で反撃を試みる。

 紙一重で避けたミランダはさらにカウンターで触手を切りつけた。

 蠢く触手を次々と断ち切って行動を封じていく。

 これまでの彼女からは想像できないほど的確な動きだった。


 現在、ミランダは魂の波動からハロルドの次の行動を予測している。

 覚悟を決めたことで発現した新たな異能により、彼女は攻防共に完璧な対応を実現しているのだった。


「あなたをこの街で終わらせる。これ以上、被害を拡大させないのが願い……そうよね」


 ミランダがハロルドを滅多切りにする。

 ハロルドは触手を再生させて戦闘を継続しているが、だんだんと動きが鈍っていく。

 度重なるダメージで魂が著しく破損し、限界を迎えようとしているのだ。


 一方でミランダも重傷だった。

 刃の維持で魂を酷使している上、触手による溶解も受けている。

 連戦に次ぐ連戦に加え、攻撃のために魂のエネルギーを使っているため、傷の治りも普段より遅かった。


 無人の街で両者は殺し合う。

 ミランダは涙を流す。

 ハロルドは叫ぶ。

 互いの感情が命を削り、奥底の魂にまで波及する。


 やがてミランダの斬撃がハロルドを無数の断片に分割した。

 最後の力を振り絞った攻撃だった。

 ほぼ同時にハロルドの触手がミランダの頭部や胸、腹を貫いて大穴を開ける。


「……っ」


 ミランダの口から血が垂れる。

 貫かれて溶けた傷口は再生せず、それはハロルドも同様だった。

 二人は力尽きて倒れた。

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