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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第80話 一つの覚悟

 下水道が爆発し、天井が放射状に崩落した。

 巻き込まれたミランダだったが、なんとか地上に這い出る。

 胴体には穴が開き、溶けた内臓がこぼれていた。  ミランダはそれを乱暴に体内へと押し戻す。


 一瞬遅れてハロルドも地上に現れた。

 黒銀の触手を大量に生やしたハロルドは、もはや人型を留めていなかった。

 彼はのたうち回ってミランダに乱打を浴びせる。


 ミランダは咄嗟に防御するも、触手が命中した腕の肉が弾け飛んだ。

 さらに傷口がどろどろに溶けて骨が覗く。

 黒銀の触手はノワールの黒い水の特性を受け継いでいるのだった。

 傷を見たミランダは眉間に皺を寄せる。


(これは不味いわね……)


 ハロルドの猛攻は止まらず、無数の触手を鞭のようにしならせてミランダを滅多打ちにする。

 ミランダは素早く回避しつつ距離を取り、ダメージを最小限に抑えようとしていた。

 それでも完璧とはいかず、全身各所が溶けている。

 再生する端から攻撃を受けるため、常に負傷状態を強いられていた。


 一方、ハロルドは甲高い笑い声を響かせていた。

 異形と化した肉体で陽気に跳ね回り、魔性の連撃を繰り出している。

 体力は底無しで、速度は衰えるどころかだんだんと目で追えない俊敏さになってくる。

 ミランダは必死に逃げながら叫ぶ。


「ハロちゃんお願い! 元に戻って!」


「ひはははははははははははははくるしいしいくるくるくるしい助けてててててててててて」


 ハロルドは泣き叫びながら触手を振るう。

 渾身の薙ぎ払いがミランダの鼻から上を木っ端微塵にした。

 頭部の大部分を欠損したミランダはその場に倒れる。


 僅かな間を置いてミランダの再生が始まった。

 彼女は脳を剥き出しにしたまま、目に涙を浮かべている。


 視線の先では、ハロルドが周囲の建物を無差別に破壊している。

 縦横無尽に蠢く触手は、表面に目玉や手足、尖った角、翼といった部位を生やしている。

 箍の外れたハロルドの能力が魔族の部位を滅茶苦茶に再現しているのだ。

 自我が崩壊したハロルドは無人の街を更地にしていく。

 ミランダの復活にも気づいておらず、愉快そうに力を振るっている。

 そこに人間としての面影は皆無だった。


 ハロルドの暴走を眺めるミランダはぽつりと呟く。


「もう、手遅れなのね」


 その時、ミランダの目に変化が生じる。

 深い絶望が枯れて、一つの決意が固まろうとしていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第80部分到達、お疲れ様です! [気になる点] >「もう、手遅れなのね」 >その時、ミランダの目に変化が生じる。 >深い絶望が枯れて、一つの決意が固まろうとしていた。 ……そうするしか、…
[一言] 大丈夫。この小説で味方サイドに犠牲者が出たことは5回しかないから
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