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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第71話 悪意の津波

 ハロルドとミランダは建物の並ぶ区画を越えて大きな広場に出る。

 そこには数千の教徒が待ち構えていた。

 一様に晴れやかな笑顔を浮かべて二人を凝視している。

 手にはそれぞれ棍棒や剣、弓や杖を携えており、紋章入りの鎧を着る者もいた。

 これまでに現れた教徒よりも位が高いのだろうとハロルドは予想する。


 少し離れた位置で停止したハロルドはミランダに問う。


「結構な数だな。やれるか?」


「楽勝よ。ハロちゃんはどうかしら」


「愚問だろ。一瞬で皆殺しにしてやる」


 二人が踏み出そうとしたその時、教徒の軍勢の背後から黒い水が溢れ出した。

 黒い水は津波のような勢いで彼らを洗い流していく。

 足元をすくわれて転倒する者達が続出し、次々と声を上げた。


「うわあああああああっ!?」


「わっぷ、たすけてくれぇっ!」


「俺の腕があああああああああぁぁぁッ!」


 断末魔の叫びと共に、教徒の肉体が黒い水に溶けていく。

 肉体に宿る魂が津波へと還元され、さらに被害を拡大していった。

 黒い水の勢いは衰えず、それどころか際限なく広がっている。


 異様な光景を前にハロルド達は立ち止まる。


「なんか分からんがヤバいな」


「ハロちゃんなら飲み干せるんじゃない?」


「お前が先に飲んでくれ」


 不死身の二人も正体不明の黒い水には触れようとしない。

 軽口を言い合いながら彼らは元来た道を戻り、間一髪のところで建物の上に避難した。

 黒い水の津波は勢いを増し、都市全体へと浸食を開始する。

 何も知らない民や教徒、兵士が無差別に吞み込まれていった。

 彼らは等しく溶けて黒い水の一部となる。


 ハロルドは津波の流れを観察する。

 そうして視線を都市の中央部に向けた。


「発生源は……城か」


「教祖の仕業なのかしらね」


「そうだろ。これは明らかに禁術だ。俺達の侵入に合わせて何か仕掛けてきたらしい。敵味方も関係なしに発動するなんて狂ってやがる」


 異常事態の中でも、城は整然とした雰囲気で君臨している。

 ハロルドはそこから底無しの悪意を感じ取った。

 黒い水と同質の魔力が伝わってくるのだ。


(手遅れになる前に潰したいが、この分だと厳しいな)


 ハロルドはこの展開が術者の計画通りであることに勘付いていた。

 そして妨害できる段階を超過していることも察する。

 彼は今後の立ち回りについて思案しつつ、ミランダと共に高所へと移動した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! >悪意の津波 まさか数千の軍勢が、ハロルドとミランダ以外の者に蹂躙されるとは思わなかった。 [一言] 続きも気にしながら待ちます!
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