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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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65/116

第65話 予想外の顛末

 ハロルドの翼に美女が齧り付いた。

 彼女は骨ごと噛み千切り、さらに傷口へ顔を突っ込む。

 生き血を啜り、旨そうに肉を喰い始めた。

 美女の再生力が高まり、ハロルドから負った傷が急速に治っていく。


 翼の損傷で高度がやや落ちる。

 ハロルドは懸命に反撃するが、美女の捕食は止まらない。

 どれほどの致命傷を受けようと反応せず、平然と口と手を動かす。

 苦痛すらもスパイスのように味わい、受けたダメージを凌駕するスピードで咀嚼していた。


 その様子にハロルドは心の中で悪態をつく。


(俺を食い尽くすつもりか!? このままじゃ埒が明かないぞ!)


 飛行による逃走を諦めたハロルドは作戦を切り替える。

 体内の魔力を大量に消費することで、彼は全身を巨大な岩石の怪物へと変貌させた。

 岩モグラと呼ばれる生物をベースに、複数の種族の特性を加えた混合魔族だ。

 質量無視の変身を遂げたハロルドは、長い舌を美女に巻き付けて捕らえた。

 咄嗟に振りほどかれないように、変形させた骨で突き刺して固定する。

 野太い声でハロルドは告げる。


「くたばりやがれ」


 二人は森へと落下し、美女を押し潰す形で地面に激突した。

 落下の衝撃で周辺一帯の草木が消し飛び、大地も抉れてクレーターが出来上がる。

 巻き上がる土煙に咳き込みながら、人間形態のハロルドがクレーターから這い出てきた。

 彼は疲れた様子で座り込む。


「これで、どうだ……さすがに死んだか……?」


 土煙の中で人影が動く。

 ぎこちない歩みで現れたのは骨と肉の異形だった。

 不自然に潰れた四肢と胴体はあらぬ方向を向いており、剥がれた筋肉や臓腑の破片を垂らしている。

 頭部に至っては完全に分離したものを小脇に抱えていた。

 目を閉じて狂笑を張り付けている。


 壮絶な美女の姿にハロルドは呆気に取られる。


「……嘘だろ」


 美女は自身の頭部を持ち上げ、首の断面に置く。

 左右に何度か回して角度を調整すると、すぐに繋がって動くようになった。

 美女の肉体が徐々に再生し、元の容姿を取り戻していく。


「ふう」


 ぱちぱちと瞬きをした美女は、人間の姿となったハロルドを見る。

 彼女は口を半開きにして固まった。

 溢れ出していた殺気が霧散し、途端にしおらしくなる。

 頬を赤めた美女は狼狽えた様子で呟いた。


「えっ、あっ、顔が良い。好き」


「は?」


 ハロルドは思考停止した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] えっ、あっ、顔が良い。好き」 デジャヴが…ここ3年で3回くらいみたわ
[良い点] 今話もありがとうございます! [一言] >頬を赤めた美女は狼狽えた様子で呟いた。 >「えっ、あっ、顔が良い。好き」 ……おんやぁ? これはもしや……。 続きも楽しみにしています!
[良い点] 貪りまくった後の面食い
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