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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第64話 泥沼の殺し合い

 猛烈な痛みと共に、ハロルドの視界は闇に閉ざされる。

 噛み付かれた拍子に眼球を破壊されたのだ。

 ハロルドは反射的に叫ぶ。

 それでも美女は止まらず、彼を押し倒して顔面を喰らう。

 ハロルドは首筋辺りに新たな眼球を生み出し、それで美女を視認した。

 破裂した頭部を晒したまま、美女は狂った笑みを湛えている。


(脳を潰した! なぜ死なないんだ!?)


 ハロルドの脳内に疑問が浮かぶも、悠長に考察する暇はない。

 彼は狼の前脚を鎌状に変えると、美女の腹に押し当てて切り裂いた。


 傷口から内臓がこぼれ出す。

 それでも美女は止まらずにハロルドを齧り続けた。

 捕食のたびに額の破損が塞がり、腹の傷もたちまち再生していく。


(こいつも不死身か!)


 ハロルドは美女の厄介さに気付く。

 不死身同士が戦った場合、必然的に削り合いになる。

 ハロルドは己の再生力に自信があったが、相手が同系統の能力となると確実に勝てるか分からない。


(このまま消耗戦になるのは面倒だ。一気に片を付けるッ!)


 ハロルドは新たに手足を生やし、全身の筋肉を膨張させる。

 そこから強引に美女を掴んで立ち上がると、一直線に走り出した。

 捕食をやめた美女は、目を輝かせて笑う。


「うふふふ、どこに行くのぉ?」


「…………」


 ハロルドは答えずに疾走する。

 その直後、二人は崖から飛び出した。

 すぐさま重力に引かれて落下を開始する。

 ハロルドは肩から翼を生やして上下させた。

 彼は顔面を再生させて美女に告げる。


「じゃあな。あとは勝手にやってろ」


 ハロルドは美女を蹴り落とそうとする。

 しかし、美女はしがみついて離れなかった。

 皮膚にめり込むほどの力で掴み、ハロルドの首筋に喰らいつく。

 筋肉を噛み千切りながら、美女は満面の笑みを見せた。


「ねえ、もっと欲しいわ」


「……クソッタレが」


 ハロルドと美女は空中で殺し合う。

 魔女の爪がハロルドの上半身を切り裂き、体内の臓器も傷付けた。

 反撃とばかりにハロルドが強酸を吐き出して美女を溶かす。


 ハロルドは傷口を再生させて笑う。

 美女も骨が見え隠れした顔で笑っていた。


 互いに防御を捨てており、密着状態での攻撃はすべてクリーンヒットしていた。

 ここで怯めば拮抗が崩れると二人とも理解している。

 血みどろの二人は破壊と再生を繰り返して戦い続けた。

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