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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第58話 魔剣の勇者

 魔術工房を出たエナは、マギリを腰に吊るして歩き出す。

 揺れるマギリは彼女に尋ねた。


「次の仕事は何だ」


「東の街で戦闘指導ッスね。明日までに到着する予定ッスね」


「よし、今のうちに打ち合わせでもするか。本番で慌てたくねえからな」


「真面目ッスね」


「当り前だろうが! 俺様はいつだって全力だ! 一流の剣士は量産しまくるぞッ!」


 マギリは張り切って宣言する。

 その態度にエナは笑う。


「きっとリグルさんも楽しみにしてるッスよ」


「……まあ、そうだな。お前も使い手として成長しろよ」


「もちろんッス。立派な剣士になるつもりッス。超一流になるッス」


「へえ、いい響きじゃねえか!」


 喜ぶマギリと笑い合いながら、エナはふと立ち止まる。

 空を見上げた彼女は静かに呟いた。


「——リグルさん、見ててくださいね。あたしとマギリさんで頑張るッスよ」


「うむうむ、期待しとるぞ」


 剣から声が発せられた。

 声は紛れもなくリグルのものであった。

 静寂が漂う中、声は不思議そうに言った。


「ん? 何を固まっておるのじゃ?」


「えええええええええええええええっ!?」


「爺てめえなんで生きてんだァッ!」


 エナとマギリがほぼ同時に絶叫する。

 剣を鞘から抜いたエナは、混乱しながら振り回して走り出した。

 マギリも何事かを喚いているが、焦りすぎてほとんど意味をなしていない。

 リグルだけがのんびりとした態度だった。


 好き勝手に騒ぐ彼らをよそに、魔術工房ではシエンが寛いでいた。

 聞こえてきた絶叫に微笑むと、彼は誇らしげに頷く。


「魂の抽出と移植は成功したようだね。しっかりと機能しているようだ」


「さすがです、ご主人様」


 そばでソキが賞賛する。

 差し出された紅茶を受け取ったシエンは流暢に語る。


「本来、死後の魂は蒸発する。記憶の抽出は肉体に残った情報に過ぎず、魂に干渉する技術ではない。しかし今回、僕はその境界線を取っ払うことができた」


「素晴らしい発想ですね」


「リグルの魂がしぶとくて助かったよ。死体に魂がへばりついていたから成功したようなものだ。工夫と改良は必要だし、実用化はまだ遠いかな」


 紅茶を飲んだシエンは窓から外を眺める。

 人造勇者の剣——マギリとリグルの人格が宿るそれを、エナが掲げて走り回っていた。

 どうやらまだ騒いでいるらしい。


「さて、あとは三人の努力次第だ。魔剣の勇者がどうなっていくのか見守ろうじゃないか」


 そう言ったシエンは、カーテンを閉じて客間を出た。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! ……ファッ!? [一言] 続きも楽しみにしています!
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