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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第51話 奈落と魔剣

 奈落の領域は深い闇だけが広がる空間だった。

 元の地形は分からず、己の輪郭すらほとんど見えない。

 目を凝らすと僅かに認識できる程度だった。


「視覚に頼るなよ。反応が遅れる」


「分かっとるわい」


 リグルはマギリを持って身構える。

 彼らの足元では、闇を押し退けるように半透明の結界が生み出されていた。

 その結界がある部分のみ、周囲の正常な荒野を映している。

 マギリは正体を察してリグルに伝えた。


「ルーンミティシアの結界だ。自動攻撃も飛んでこない。ひとまずここは安全らしい」


「しかし長持ちしそうにないのう」


 リグルが指を差した地点では、領域の闇と結界がせめぎ合っている。

 ただし、闇の勢いが強いのは明白で、結界が端から徐々に剥がれて砕け散っていた。

 形勢が覆ることはなく、闇は二人のいる場所を再び蝕もうとしている。


 マギリは苦々しい声音で尋ねた。


「どうやって戦うつもりだ」


「決まっとるじゃろ」


 リグルが大股で歩みを進める。

 その顔は猛獣じみた笑みを露わにしていた。

 魔剣を掲げたリグルは鬼迫に満ちた咆哮を上げる。


「術者を見つけて叩き斬るッ!」


 リグルの袈裟斬りが衝撃波を放つ。

 攻撃を受けた闇に亀裂が走るも、すぐさま修復して黒一色となる。

 しかし、リグルからすれば己の力が通じると分かっただけで十分だった。

 彼は結界の安全地帯から飛び出すと、闇を切り裂きながら疾走する。


「闇のせいで魔力感知なんかできねえぞ!」


「大丈夫じゃ! どろどろした殺気が伝わってくる! こっちの方角で合っとる!」


 リグルは迷いなく突き進む。

 常に進路を斬り続けることであらゆる障害を払っていく。

 ところが、リグルは脇腹に痛みを覚えた。

 見れば何かの魔物の指が突き刺さっている。

 リグルは足を止めずに指を引き抜いて捨てた。


「自動攻撃が始まった! 全方位に気を付けろッ!」


「無茶を言うのう!」


「てめえならやれるだろ!」


「無論じゃ!」


 リグルの斬撃は加速し、四方八方からの攻撃を弾き落とす。

 マギリは斬った闇から魔力を取り込んで消耗を防ぐ。

 刃は常に再生させて最高の切れ味を維持した。


 力のリグル。

 技のマギリ。

 これまで数多くの戦場を共にしたことで、自然と連携が取れていた。


 二人は決して怯まない。

 蔓延する死にも恐れず、狂気的な全身を見せる。

 彼らの向かい先では、どす黒い殺意が渦巻いていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >力のリグル。 >技のマギリ。 「技の1号、力の2号、力と技のV3」を連想しました。
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