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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第46話 勝利の余韻

 エナが安全な場所で待機していると、リグルとマギリが戻ってきた。

 二人とも返り血に濡れて赤黒くなっているが、大きな傷は負っていない。

 数百体の魔族に挑んだとは思えない姿であった。

 この事実が二人の驚異的な戦闘能力を示している。


 予想できていた結果なのでエレナは特に驚いていない。

 屈み込んでいた彼女はリグルに布を渡した。


「あ、おかえりなさいッス」


「いやあ、爽快じゃのう。我ながら見事な勝利じゃ」


 布で血を拭うリグルは上機嫌だった。

 殺戮によって心身が満たされた彼の肌艶は良く、十歳は若返ったように見える。

 武器の破損を気にせず、思う存分に力を振るえたのも大きいだろう。


 あれだけの激戦を繰り広げたにも関わらず、リグルに消耗は見られない。

 体力面ではまだ十分な余裕があるのだ。

 同じ戦いを再現しろと言われれば、リグルは喜んで実行するだろう。


 一方でマギリは疲労困憊していた。

 刃のあちこちに刻まれた亀裂は、リグルの乱雑な戦いを物語る。

 再生機能で徐々に修復しているが、それでも刃が折れなかったのは奇跡に近い。

 ひとえにマギリの根性が為せる業だった。


「全身が痛えな……もっと大切に扱えよ。俺様は勇者だぞ?」


「細かいことは気にするな。お主も戦士ならば多少の苦痛など堪えてみせよ!」


「多少じゃねえから文句言ってんだよッ!」


 怒鳴った後、マギリはエナに意識を向ける。

 マギリはうんざりした様子で言い放った。


「こいつは駄目だ。別の使い手を探そうぜ」


「でもお二人の息ぴったりッスよ。もったいないッス」


「どこかだよ!」


 エナは首を傾げる。

 それから不思議そうに指摘した。


「こんなに強いのに不満ッスか? マギリさんが求めてた剣士でしょ」


「違う! こいつはただの怪力爺だ! 技を捨てた脳筋で剣士じゃねえ」


「話は終わったか? まだまだ狩りにゆくぞ」


 待ち切れなくなったリグルは勝手に歩き出した。

 彼はぎらついた笑みを浮かべ、背中からは再び濃密な殺意が沸き立たせている。

 すぐさまマギリが喚く。


「ちくしょう、離せ! 俺は一流の剣士を探しに行くんだ!」


「そんなこと後回しでいいじゃろう。ワシと魔族の屍で山を作ろうではないか!」


「いーやーだー!」


 結局、リグルを止めることはできず、マギリは魔族狩りの旅に付き合う羽目となった。

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