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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第43話 新たな担い手

 魔術工房を後にしたエナとマギリは草原を歩く。

 行き先は次の剣士のもとだ。

 各地から集めた情報をエナが吟味し、次の使い手としてマギリを届けるのである。

 それが今回で三十九人目だった。


 道中、エナは世間話のように説教を始める。


「マギリさんは選り好みしすぎッスよ。もっと謙虚な態度でいきましょう」


「うっせえ。俺様は一流の剣士しか認めねえよ。俺様を使って負けるのはそいつが弱いせいだ」


「使い手の実力が足りないなら、マギリさんが頑張ればいいじゃないッスか。怠慢ッスね」


「……お前、いつか本当に切り刻んでやるからな」


「ふふ、楽しみにしてるッス」


 マギリが脅してもエナは動じない。

 こういった会話は半ば恒例となっており、マギリも本気で言っているわけではないと知っているためだ。


「次の担い手はどんな奴だ」


「とにかく強い剣士らしいッスよ。上級魔族を斬りまくりだとか」


「ほう……面白え。俺樣に見合うか試してやらねえとな」


「やっぱり偉そうッスね」


「お前も大概だろうがッ!」


 漫才のようなやり取りをしつつ、二人は予定通りに移動する。

 そして数日後、彼らは広大な森の外周部に辿り着いた。

 エナは辺りを見回す。


「待ち合わせはこの辺りのはずッスけど……」


「おい、向こうだ。血の臭いがする」


「マギリさん、嗅覚があるんスね」


 エナは支持された方向へと歩いていく。

 ほどなくして切り株に腰掛ける一人の老人が見えてきた。

 老人は異国風の着物に身を包み、背中を丸めてじっとしている。

 二人の位置からだと顔は窺えない。


「あの爺さんだ」


「了解ッス。話してみましょう」


 エナはさっそく駆け寄る。

 間近で見る老人は枯れ木のような容姿だった。

 顔や手足は皺だらけで細く、動きもひどく緩慢だ。

 エナの接近に気付いた老人は掠れた声で尋ねる。


「武器をくれるのはお主かな」


「そうッス。えっと、お名前は……」


「ワシはリグル。よろしくのう」


 エナと老人リグルは握手を交わす。

 その際も弱々しい力で、エナは少し心配になってしまった。

 彼女の懸念をよそにリグルはマギリに手を伸ばす。


「どれどれ、さっそく武器を」


「触るな。俺様を扱うのは一流の剣士だけだ。こんな弱っちい爺さんじゃねえ」


「ほほう、喋る剣か。面白いのう」


 リグルは聞く耳を持たずにマギリを掴み取った。

 鞘から刃を抜こうとするがびくともしない。

 マギリが拒絶しているのだった。


「おい爺さん。あんまふざけてんじゃねえぞ。俺様は絶対に認めねえからな」


「——武器が人を選ぶか。生意気じゃな」


 リグルの目つきが変わった。

 穏やかだった双眸に獰猛な気配が宿る。

 瘦せ細った肉体も筋肉が盛り上がり、二回りも三回りも大柄になった。


 豹変したリグルは柄を握り、無理やり引き抜こうとする。

 鞘が震え、柄が軋み、マギリが苦しそうな声を上げた。

 それでもリグルは力を緩めるどころか、さらに力んで引き抜きにかかる。

 肥大化した肉体は最初の面影を完全に失っていた。


「人が、武器を選ぶのじゃ。逆は成り立たぬ。そう、決してな」


 ついには鞘がずれて刃が覗く。

 リグルは獣のような笑みで舌なめずりをした。


「喋る剣よ。おぬしの切れ味を試してやろう」

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― 新着の感想 ―
[良い点] あ…呪術の刀おじさんだ [一言] めっちゃ面白い
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