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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第35話 真理の目

 五号が階段を上がると、場は一触即発の雰囲気だった。

 固まって警戒する子供達は、動揺で魔力が漏れ出し、それぞれの持つ属性の色で明滅している。

 緊張と恐怖が満ちており、些細な刺激で火災が再発しそうだった。


 子供達が注目する先は森と敷地の境界だった。

 そこには白い制服を着た集団が防御魔術を張って待機している。

 魔力の灯火を浮遊させた彼らは三十人は下らない。

 五号の目測では全員が平均的な魔術師以上の力量であり、精鋭部隊と称するに足る集団だ。

 彼らの制服は院長と同じデザインで、真理の目であるのは明らかであった。


(少し遅かったが間に合ったな)


 五号はすぐさま子供達に駆け寄る。

 子供達は混乱した様子で五号に報告をした。


「院長先生っ!」


「あいつら、いきなり魔術で捕まえようとしてきたんだ!」


「早くやっつけてよ!」


 五号は子供達を庇う位置に立ちつつ、真理の目と対峙した。

 不用意に攻撃はしない。

 擬態で容姿を変えた現在、上手くやれば騙し通すことができるためだ。

 子供達を巻き込む形で戦いにもつれ込むのは望ましくなかった。

 彼は落ち着いた声音で問う。


「今回は視察だけでは」


「ほう、この私に苦言を呈するのか。随分と偉くなったものだな、デオロス」


 不遜な態度で進み出たのは小太りの男だった。

 制服の上から華美な装飾品を身に付けており、他の者より地位が高いのが分かる。

 内包する魔力も高く、人間の中では上位に値するだろう。

 男は端的に用件を述べた。


「計画を急ぐことになった。実験体を移送して次の段階に進める」


「……次の段階とは」


「ふざけているのか? 強化人間の量産に決まっているだろう!」


 男が両手を広げて叫ぶ。

 五号の目が僅かに鋭くなった。

 握りしめた弓が小さな音を立てて軋む。

 男は子供達を指差して説明する。


「そいつらの魔力を測った後、解剖して肉体の変異を調べる。摘出した内臓や血液は加工して流用できるだろう。素体となる孤児も既に用意しているぞ」


 男は楽しそうに語る。

 五号の発する気配がたちまち冷たくなっているが、彼は気付かずに話し続けた。


「安心しろ、貴様が希望していた幹部への推薦も忘れておらんぞ。この功績はすぐ本部に――」


 発言の最中、五号が動いた。

 手慣れた動きで放たれた矢は男の胸部に命中した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] よかった…とりあえず安心 でもこのまま無事に終わるとは…
[良い点] 今話もありがとうございます! >男は楽しそうに語る。 >五号の発する気配がたちまち冷たくなっているが、彼は気付かずに話し続けた。 からの、 >発言の最中、五号が動いた。 >手慣れた動…
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