第34話 残酷な真実
本棚に近寄った五号は、次々と書類を抜き出して確かめていく。
彼の眼差しは鋭く、冷酷とすら呼べる光を宿していた。
(地上で見つかった書物に不審な点はなかった。あるとすればここしかない)
書類の他には各種魔術の専門書が保管されている。
五号はそれらを床に投げ捨てて探索を続ける。
彼の手が止まったのは、鎖が巻かれた書物を見つけた時だった。
鎖には封印術が施されており、そのままでは開けないように細工が施されている。
(無理やり破壊すると読めなくなりそうだ)
五号はこれまでの吸収した記憶の中から、封印術に関する知識を呼び起こした。
短い詠唱で術を解くと、鎖が自然と崩れて消滅する。
五号はゆっくりと書物を開いた。
書物の中身は院長の日誌であった。
読み進めるうちに、五号は様々な真実を知る。
六人の子供は実験体だった。
適正のある孤児に魔族の臓器を埋め込んだ強化人間らしい。
一人に一つの属性を持ち、それは実験によって意図的に操作された結果とのことだった。
院長の正体は、魔術組織"真理の目"の構成員だという。
教育能力の高さを見込まれて子供達の面倒を任されたそうだ。
森の只中に建物があるのは人目を避けるためで、ここは一連の実験のために用意された施設だった。
子供達に実験体としての自覚がない。
ただ心優しい院長に拾われて暮らしていると思い込んでいた。
裏では院長による観察があったにも関わらず、彼らはそれを知らなかった。
強化人間の実験について、院長はなかなか成果が出せないことに焦っていた。
そのため無茶な魔術鍛錬や投薬も何度か実施していたのだという。
(そして子供達の魔力が暴走し、院長は死んだわけか)
五号は柱に潰された死体を思い出す。
院長の死は因果応報だった。
同情の余地はないと彼は考えた。
しかし、子供達にとっての院長は善良な人物である。
正直に真実を知らせるわけにはいかない。
それゆえに五号は地下室の破壊を決意した。
日誌を閉じようとした五号だったが、最後のページを見て止まる。
そこには真理の目による視察日が記載されており、それが今夜となっていた。
刹那、外から子供達の悲鳴が聞こえてきた。
大量の魔力反応が敷地内へ接近してきている。
五号はすぐさま階段を駆け上がった。




