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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第33話 施設の秘密

 夕食の時間となり、五号と子供達は広場で鍋を囲む。

 鍋には森の獣や野草、キノコなどが入っている。

 デザートは数種類の木の実だ。

 子供達は目を輝かせて食事を堪能する。


「院長先生の料理、おいしすぎるよ!」


「この前まで下手だったのに!」


「いつ練習したの?」


「私にも教えてほしいなー」


 絶えず話しかけてくる子供達に対し、五号は曖昧な笑みで応じる。

 迂闊に喋ると擬態に気付かれる恐れがあるため、口数は意図的に少なくしていた。

 それでも日常的な交流や雑談は図っており、子供達とは仲良く接している。

 以前までの五号を知る者が見れば目を疑う光景だろう。


 子供達の話に付き合いながら、五号は他の勇者の顔を思い浮かべる。


(ルーンミティシアやケビンならば、もっと自然に取り繕えるに違いない)


 五号は院長を演じ切れていないことを自覚していた。

 元々、人付き合いを不得手とする上、彼は死体の記憶を取り込めていない。

 したがって院長の人柄は子供達の話から推察するしかなく、どうしても違和感は生じてしまう。

 特に当初はあまりにも不自然だったので、五号は「火災の後遺症で思考が鈍り、表情が作りづらい」と誤魔化していた。

 子供達はどこまで信じたのかは定かではないものの、彼らがそれ以上に問い詰めることはなかった。


 現在では五号も学習し、院長の演技もそれなりに上達した。

 咄嗟の対応に窮する場面も少なくなり、魔術の指導も順調に行っている。

 五号は「記憶吸収以外でこれほどまでに多くのことを学べるのか」と密かに感嘆していた。


 その日の夜、子供達が寝たのを見計らって五号は焼け落ちた建物を探索する。

 彼が求めるのは院長の私物だった。


 邪魔な瓦礫をどかして調べていくと、地下へと続く階段を発見した。

 階段は焼け焦げたカーペットの下にあり、この先に何らかの秘密があるのは明らかであった。


 五号は目を細めて階段を見据える。

 地下は闇に覆われて様子が窺えない。

 物音はせず、能動的な魔力反応もないため、少なくとも生物は存在しないようだった。


 弓矢を構えた五号は慎重に階段を下り始める。

 階段が終わると同時に、地下が一気に明るくなった。

 五号は即座に弓を構えるも攻撃は来ない。


 魔力の照明に照らされるその空間は、白一色の広い部屋だった。

 等間隔で並ぶ本棚は無数の書類で埋め尽くされている。

 部屋の中央には魔法陣が描かれ、灰色の水晶玉が設置されていた。


 五号は、この場所が魔術工房であることを理解した。

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