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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第32話 嘘は続く

 二週間後、森の只中に奇妙な建物が出来上がっていた。

 瓦礫の山に絡みつく形で樹木が生えて屋根となり、ドーム状の新たな建造物となっている。

 そこは焼け落ちた建物の跡地だった。


 廃材を組み上げて作った椅子に座り、五号が焦げた書物を読んでいる。

 彼の容姿は未だに院長のままだった。

 擬態能力の扱いに慣れたことで元の姿に戻れるようになったが状況的に使えないため、一度試したきりとなっている。


 広場には六人の子供がいる。

 彼らは輪になって瞑想していた。

 その様子を五号は横目で眺めている。


 あれから五号は正体を偽って子供達と暮らしていた。

 自らを死体の男――院長と称して真実を明かさずに過ごしている。


 休暇の予定が大幅に変わったものの、彼の目的は固有能力の獲得だった。

 それを達成した現在、五号の予定は白紙となり、空いた時間で子供達の面倒を見ている。


 揃って瞑想をさせているのは、魔力操作に慣れさせるのが狙いである。

 二週間前の火災は、感情の昂ぶりによる魔力暴走が原因だった。

 その再発を防ぐために制御する術を身に付けさせている。


 子供達は五号の言うことに自然と従っていた。

 彼らは院長に全幅の信頼を寄せており、少しも疑おうとしない。

 加えて五号がなり替わる前から似たような鍛錬をしていたらしく、魔力操作の腕前は順調に上がっている。


 静かに瞑想をする中、唐突に赤髪の少年アキが立ち上がった。

 アキは頭を掻きむしって叫ぶ。


「だーっ! もうやってらんねえ! 退屈すぎて死んじまうよ!」


 アキの隣では、青髪の少年セイが迷惑そうな顔をしていた。

 しかし口喧嘩になるのが嫌らしく、文句を言わずに瞑想を続ける。


 一方、緑髪の少年ジンは皮肉った笑みでアキに告げる。


「短気だねえ。火属性の特徴なの?」


「……あ? なんだよてめえ」


 怒るアキが詰め寄ろうとした時、彼を押し留める者がいた。

 茶髪の少女レナは、二人を交互に見て叱り付ける。


「あんた達、何してるの! 真面目にやらないとだめでしょ! ルノとノアを見習いなよ!」


 レナが指差す先には、白髪と黒髪の双子が座っていた。

 白髪の少女がルノ、黒髪の少女がノアだ。

 双子は周りの声が聞こえないかのように瞑想を続けている。

 練り上げられた魔力は全身に浸透し、揺らぐことなく保たれていた。


 それを見たアキは舌打ちをして自身も瞑想に戻る。

 他の者達も元の位置に戻って目を閉じた。

 五号は読書の片手間に子供達の様子を見守っていた。

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