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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第28話 元人間の意見

 五号が全速力で赴いたのは、最前線から少し外れた療養地だった。

 軍人だらけの宿屋に突入した五号は、周りの制止を無視してとある人物に接触する。


「休暇の過ごし方、願望の見つけ方、固有能力を発現した経緯を教えてほしい」


 開口一番の要求に相手は戸惑う。

 その人物——人造勇者ケビンは混乱を隠さず応じた。


「い、いきなり何だ?」


「休暇の過ごし方、願望の見つけ方、固有能力を発現した経緯を教えてほしい」


「二回も言うな! 意味が分からんから順に説明しろっ!」


 ケビンに怒鳴られた五号はこれまでの出来事を淡々と説明する。

 一通り聞いたケビンは、感心した様子で頷く。


「へえ、ルーンミティシアの紹介か。珍しいこともあるもんだ」


「人間の魂を据えた人造勇者は現状お前だけだ。だから意見を聞きに来た」


「そう言われてもなぁ……俺は奴隷だし、休暇とか願望なんて知らねえぞ? 参考にならねえと思うが」


「なんでもいい。話してくれ。参考になるか否かはこちらで判断する」


 前のめりになる五号は真剣な顔をしていた。

 仕方ないのでケビンは自分なりの答えを伝えることにした。

 彼は腕組みをして思い出しながら話す。


「休暇の過ごし方って言ったら、とにかく金を使うことじゃねえかな。少なくとも俺はそうしてる。いつ死ぬか分からないから後悔しないようにな」


「金の使い道は何だ」


「食い物で贅沢するんだよ。高い肉とか酒を部下に奢ったりもする。そうやって仲良くなると連携が上手くいくんだ」


「食事と戦闘は無関係だ」


「そうでもないぞ。親睦を深めるのは割と大事だ。土壇場で助け合ったりできるんだぜ?」


 ケビンに反論された五号は悩む。

 彼にとって仲間とはただの呼称に過ぎず、その意味について深く考えたことはなかった。

 自身の部隊の人間とも事務的なやり取り以外で会話することはない。

 そんなものは不要だと考えてきたので当然だろう。

 だからこそ、ケビンのスタンスが新鮮だったのだ。


 五号は続けて質問を投げかける。


「固有能力はどうやって発現したんだ」


「別になんてことはない。ある日いきなり使えるようになった」


「きっかけはなかったのか」


「何もない。本当に突然だった」


 そう言ってケビンがポケットから石炭を取り出し、口の中に放り込んだ。

 彼は音を立てて石炭を嚙み砕いて飲み込む。

 顔を歪めて水を飲んだ後、ケビンは改めて説明した。


「食った物を即座に魔力へと変換する。それが俺の特殊能力だ。シエンによると、生存本能から発現した機能らしい」


「汎用性が高そうだ」


「ああ、増やした魔力を回復や身体強化に回したり、仲間に分けることもできる。かなり便利で重宝してるんだ」


 ケビンの話を聞き、五号は気付く。

 仲間を大切にしたい、死なせたくないという願望がケビンの固有能力になっているのだ。

 内容は異なれど、ルーンミティシアと同じ方向性だった。

 そこまで理解した五号はすぐさま踵を返す。


「参考になった。感謝する」


「もう行くのか。休暇中なら一緒に飲もうぜ」


「時間は有限だ。早く停滞の壁を破らなければならない」


 そう言い残して、五号は宿屋を出て行った。

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