表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/116

第23話 人造勇者の真髄

 追体験から抜け出した時、ルーンミティシアの前にはユナの死体があった。

 もう喋ることはない。

 魂の宿らないただの死体だった。


「ユナ、あなたは……」


 ルーンミティシアが呟いた瞬間、彼女のそばに大鎌の悪魔が降り立った。

 悪魔は意外そうな様子で鼻を鳴らす。


「首を切っても蘇るとは……しぶといな。勇者が人間を超越しているという噂は本当だったか」


 ルーンミティシアは反応しない。

 彼女はユナの死体だけを見つめていた。

 その行動に苛立ったのか、悪魔の殺気が膨れ上がる。

 大鎌の刃に魔力が浸透して揺らめく光を発した。


「今度は再生できなくなるまで切り刻んでやろう」


「やめて」


 ルーンミティシアが悪魔を一瞥して手をかざす。

 彼女を囲う形で箱型の結界が出現した。

 すぐさま悪魔が大鎌を叩きつけるがびくともしない。

 連続で放たれる斬撃でも損傷しなかった。


 一方、ルーンミティシアの負傷が瞬く間に癒えていく。

 戦闘で負ったダメージが消えて、首の切断痕も薄れて無くなった。

 全快したルーンミティシアは、結界に猛攻を浴びせる悪魔を冷静に観察する。


 侍女ユナは回復魔術と結界魔術の使い手だった。

 ただしその才能はお世辞にも優れているとは言い難く、魔力量は一般人並みで習得できたのは初歩的な術に限られた。

 他の系統については一切扱えず、総合的な力量は決して高くない。


 ところがユナは地道に鍛錬を重ねて、己の長所と短所に向き合った。

 術式の工夫で魔力消費を限界まで抑え、詠唱破棄や術の同時行使で対応力を底上げした。

 さらに多種多様な知識を学んで自身の力に活かす。


 こうしたユナの努力は単なる自己研鑽ではない。

 いつか自分が死んでも、記憶を取り込んだルーンミティシアの助けとなれるようにという気遣いだった。

 その目論見は見事に成功していた。


 ユナの魔術を引き継いだルーンミティシアは、短期間で急激に実力を伸ばした。

 人造勇者として優れた身体機能に魔術の技量が結び付き、上級魔族すら凌駕する力に到達したのである。


「これで終わりですわ」


 ルーンミティシアが手を動かすと、それに従って結界が変形する。

 結界は悪魔を包み込んで閉じ込めた。

 悪魔が必死に脱出を試みるが、やはり破られる気配はない。


 やがて結界は蓄積したダメージを内部――つまり悪魔へと解放した。

 轟音と共に爆発が発生し、悪魔は一瞬で蒸発した。


 ルーンミティシアは残った結界をさらに変形させて、戦斧の形で固定する。

 それを握った彼女は、残る魔族の殲滅に動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >魂の宿らないただの死体 これはルーンミティシアが魂を取り込んだって描写かな?人造勇者は記憶というより魂を取り込んでる感じ?記憶だけだと魔力も増えてるみたいな描写の説明がつかないし
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ