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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第13話 勇者の評判と大義

 賢者シエンが製造した人造勇者の中でも、ルーンミティシアは早期に自我が芽生えた個体である。

 自由気ままな性格が災いして、シエンの命令を無視するのが常だった。


 現在、ルーンミティシアは地方領主と契約して管轄都市の一つに滞在している。

 人々の守護を建前に前線へと赴かず、優雅な暮らしを謳歌していた。


 その日の仕事を終えたルーンミティシアは、ユナと共に屋敷へと向かう。

 道中、屋台の店主が彼女に手を振った。


「ルーンミティシア様! 新しい宝石を仕入れました!」


「まあ素敵ね。すべて買いますわ」


 次に声をかけてきたのは書店から出てきた青年だった。

 青年は嬉しそうに書物を掲げて報告する。


「勇者様ー! ご提案いただいた魔導書が完成しましたよー! さっそく何冊か売れました!」


「さすがですわね。わたくしにも読ませてくださるかしら」


 野菜屋の主人が店先から呼びかける。

 彼は両手いっぱいに商品を抱えていた。


「お嬢っ! 新鮮な野菜を食べたくねえか!」


「ぜひ食べたいですわ。おすすめの料理も教えてください」


 酒場で飲んだくれる冒険者の集団が歓声を上げる。

 彼らは赤ら顔で好き勝手に指笛を鳴らしたり、ぬるいエールで乾杯した。


「ルーン様! この前は魔物討伐を手伝ってくれてありがとうー!」


「礼には及びませんわ。腕の怪我も治ったようで何よりですわ」


 粗末な服の少女が裸足で駆け寄ってきた。

 後ろには同じような服装の少年少女が待っている。

 少女は頬を紅潮させて花の冠を差し出した。


「ゆうしゃさまのためにつくりました! どうぞ!」


「心遣いに感謝しますわ。優しいあなたにはお返しが必要ね。皆と分けて食べなさい」


 水と食料を受け取った少年少女は何度も「ありがとう」と言いながら走り去っていく。

 満足そうに微笑むルーンミティシアはユナに問う。


「似合うかしら」


「ええ、とっても」


 ユナはルーンミティシアの振る舞いに好感を抱いていた。

 散財癖はあれど、街の人間との関係性は良好だ。

 領主からの仕事も毎日こなしており、実利的な面でも間違いなく貢献している。


(これで魔王討伐も頑張ってくれたら完璧なのに……)


 ユナは内心で嘆く。

 実際に愚痴るとルーンミティシアが拗ねるので、小さくため息を漏らすだけに留めておいた。

 拠点の屋敷が見えてきた頃、二人の進路を阻む者が現れた。


「やっと見つけたぞ」


 薄汚れた銀髪を掻き上げるその青年は人造勇者ケビンだった。

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