表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/116

第109話 責任の所在

 上の文章を読んだかね。

 なかなか良いんじゃないかな。


 ただ『愛を込めて』はナンセンスだ。

 賢者シエンの語る愛なんてゴブリンの糞にも劣る価値だろう。

 皮肉として解釈すれば、まあ一定の評価はできるが。

 個人的には末尾まで名前を伏せていた点も気に食わなかったな。


 というわけで先に自己紹介をしておこう。

 僕の名前はシエン・ルバーク。

 上記の手紙を受け取った"現代の"賢者シエンである。

 もっとも、この手紙をさらに過去へ飛ばそうとしているので、君からすれば未来かもしれないがね。

 細かいことはどうでもいいだろう。


 用件はシンプルだ。

 未来から転送されてきた世界樹だが、僕の手にも負えない。

 とりあえず君の時代に押し付けさせてもらう。

 ここまでの研究資料を近くの木の根に挟んである。

 世界樹の耐久テストについて記録してあるから目を通したまえ。


 それと未来の僕は隠しているが、世界樹から術式による存在改竄の痕跡が見つかった。

 おそらく魔術の実験で世界樹の属性を歪めてしまったのだろう。

 己のミスを隠蔽するとは情けないね。

 こんな風になりたくないから気を引き締めるとするよ。


 言うまでもないが、世界樹を破壊する方法は見つからない。

 既存のすべての系統の魔術を試したが通用しなかった。

 時空魔術で過去へ飛ばすことはできるようだが、結局は問題の先送りに過ぎない。

 くれぐれもこんなことは君で止めるように。


 さて、メッセージはこれくらいでいいかな。

 手紙の余白にこれを書いているわけだが、そろそろ飽きてきたんだ。


 ではさようなら。




 ◆




 無責任な賢者が二人いる。

 未来の僕は他人に丸投げするのが得意らしい。

 いや、過去の自分に任せているから他人ではないのか。

 そこはどうでもいいか。


 この手紙があることから察してほしいが、三人目の無責任な賢者は僕だ。

 僕の手で世界樹を破壊できなかったのは悔しいが、別次元に飛ばさないと世界が滅亡するのでね。

 やむを得ない判断というやつだ。


 前の僕が残した資料を確かめたところ、世界樹は現在進行形で成長している。

 世界を渡るたびに、新たな悪を養分にしているようだ。

 つまり問題解決はどんどん困難になっている。

 養分吸収を止める手段もないため、今のところ黙認するしかない。


 ただ、僕は新たな発見をした。

 世界樹そのものではなく、時空魔術の改良だ。

 ここまで過去に転送することしかできなかったが、並行世界へずらせるようになった。

 似て非なる世界に上書きする形で、この忌々しい樹を消滅させられるのだ。


 実に画期的なアイデアだろう。

 並行世界に飛ばせるなら、それはもう破壊したも同然ではないだろうか。

 どうせ過去に送り続けても進歩はなかったのだ。

 これでひとまず僕の世界には平和が戻る。


 つまりこの手紙を受け取ったのは別世界の賢者シエンだ。

 名前は微妙に違うかもしれないし、まったく同じかもしれない。

 何にしても僕と同一の立ち位置の人間だろう。

 きっと世界樹の問題を解決に導いてくれると信じているよ。


 では頑張りたまえ。




 ◆




 並行世界から素敵なプレゼントを受け取った。

 心温まる最高の贈り物だ。

 おかげでこの世界は魔族の蔓延る終末時代に突入した。

 広い意味では自業自得かもしれないが、これには文句の一つも言いたくなる。


 やあ、ごきげんよう。

 僕は賢者シエン・ルバーク。

 幸運にもこの手紙を見た君に託したいことが……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] バ〇ドをたらい回しにするTeam〇-Type(構成員1名)の図……。
[良い点] それと未来の僕は隠しているが、世界樹から術式による存在改竄の痕跡が見つかった。  おそらく魔術の実験で世界樹の属性を歪めてしまったのだろう。 やっぱテメェのせいじゃねぇか!死ね!この野…
[良い点] 世にも奇妙な物○……ww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ