表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/116

第105話 絶望と知欲

 ソキの挙動は天井知らずに加速していく。

 当然ながら目視では追えなくなり、リリアはその攻防の観察を諦めた。


 ソキは極限まで精度を高めた魔力の身体強化を使い、縦横無尽に宙を疾走する。

 そして、すれ違いざまに竜に打撃を浴びせる。

 竜はなんとか逃れようとするも、四方八方から襲い掛かる猛攻のせいで身動きが取れない。

 執拗に魔力を削り取られて衰弱していった。


 やがて竜は子犬のような大きさになり、ソキが首根っこを掴んで魔力を一気に奪う。

 竜を構成していた魔力が消えて球体の水晶が残った。

 リリアはそれが物質化した魂だと気付いた。

 魂を握ったソキは着地して二人のもとにやってくる。


「お待たせして申し訳ありません」


「いや、よくやってくれたよ。事前の指示通り、魂の損壊も最低限に抑えられている。おかげで良い素材が手に入った。感謝しているよ」


「恐縮です」


 シエンは受け取った魂をローブのポケットに入れる。

 リリアは魂の処遇が気になったが、咆哮の連鎖が彼女の疑問を遮った。


 黒い荒野の彼方から新たな魔族が出現する。

 ここまでに倒してきた数を凌駕する規模だった。

 圧倒的な光景を前にリリアは絶望し、無意識に膝をついてしまう。


「あんな数……とても倒せない」


 シエンとソキは冷静だった。

 二人は淡々とした様子で言葉を交わす。


「おかしいな。魔王を倒したのに勢いが止まらないね。多少は影響が出ると思ったのだが」


「今の竜は魔王ではないということでしょうか」


「そう考えるのが妥当かな。厳密には魔王を操る上位存在がいると表現すべきか。それならば魔王が死んだところで動揺しないのも分かる。我々は魔王軍の指揮系統を見誤っていたわけだね」


 シエンが歩き出した。

 ソキはすぐさま先行する形で進む。


「彼らの出発地点を目指そう。こうなったら徹底的に究明する。そこが魔王軍の本拠地であり、真の黒幕がいるはずだ」


「どのように向かいますか」


「正面突破だ。君の暴力で道を開いてくれ」


「承知しました」


 ソキが新たな魔族の大群へと突撃していく。

 一方、シエンは動かないリリアに声をかけた。


「何をしているのだね。早く立ちたまえ」


「……怖くないのですか?」


「何かに恐ろしさを感じるなら、それは知欲を満たし損ねた時だろう。僕はどこまでも進むよ」


 そう言ってシエンは歩みを進める。

 リリアはなんとか立ち上がって追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まぁ、あんな奴がラスボスとは思ってなかったが… 魂の処遇 同情するよ。赤龍。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ