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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第103話 炎の竜

 戦場は際限なく激化していく。

 死線を潜り抜ける中、リリアは険しい顔で前方を見つめる。

 密集した魔族のせいで進路がほとんど見えず、常に攻撃が飛んでくる状態だった。


(先に進むほど魔族が多い……ッ!)


 連携する勇者達も徐々に疲弊している。

 実力では圧倒的に勝っているが、魔族は犠牲を度外視して突撃してくるため埒が明かなかった。

 移動速度は鈍り続け、なんとか立ち止まらずに済んでいるといった状況である。


 リリアが戦況を心配したその時、彼女の身体が球状の結界に包まれた。

 その結界をケビンが持ち上げて思い切り投げ飛ばす。


「後で追いつく! 先に行け!」


「いいんですかっ!?」


「大丈夫だ、心配するな! 俺達は必ず生き残る!」


 リリアを閉じ込めた結界は猛スピードで上空を突き抜ける。

 目ざとい魔族が飛びつこうとするも、矢と魔術の狙撃で阻止された。

 結界自体が加速し、ついには魔族に覆われた地帯を通過する。


 緩やかな放物線を描く結界は、地面に激突した弾みで砕け散った。

 転がり出たリリアはせき込みながら立ち上がる。


 そこでは紅蓮の炎を纏う竜とソキが死闘を繰り広げていた。

 吐き出される炎を避けるソキは、空中を蹴って魔王に殴りかかる。

 天災に等しい戦いを前にリリアは呆然とする。


「あれが……」


 リリアのそばでは同じく戦いを傍観するシエンがいた。

 シエンはいつも通りの様子でリリアに声をかける。


「やあ、よくここまで来れたね。僕の予想では辿り着けないはずだったが……彼らに助けられたのか」


「はい。皆さんのおかげで追いつけました」


「なるほど。良いじゃないか。協力を得られたのは君自身の魅力によるものだ」


 冷静に分析するシエンが竜を指差した。

 竜は空と大地を自在に飛び回って炎を撒き散らしている。

 魔法陣の傘で炎を遮りつつ、シエンは解説を行う。


「見たまえ。物理的な実体を持たず、魂の発する魔力だけで存在を構築している。実に美しいね。まさに奇跡の具現と言えるだろう」


「あの竜は魔王なんですよね?」


「最強の魔族が魔王と定義するならその通りさ。この戦場であれより強い個体はいない」


「加勢しなくていいのですか?」


「彼女の希望なのだよ。僕の手を煩わせたくないそうでね」


 会話の最中、ソキの全身が炎に包まれた。

 彼女は地上へと落下して動かなくなる。

 空で停止した竜がリリアとシエンを見下ろす。

 禍々しい殺意と共に咆哮が上がった。

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