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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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101/116

第101話 選択した者の覚悟

 大量の攻撃魔術がリリアに押し寄せる。

 リリアは防御魔術で凌ぎつつ、風の刃を飛ばして術者を切り刻んだ。

 さらに炎魔術を合わせることで被害を拡大させる。


「ハァッ!」


 紅蓮の熱風が魔族を焼き切って葬り去る。

 大魔術で消耗したリリアは膝をついて呻く。

 そこに蜘蛛型の魔族が突進を仕掛けた。

 咄嗟のことで動けないリリアは目を見開いて固まる。


(まずい、死ぬ――)


 突進が当たる寸前、魔族の八本足がまとめて切断された。

 倒れた魔族の頭部に剣が刺し込まれて絶命する。


 剣を引き抜いたのは勇者ケビンだった。

 彼は呆然とするリリアに手を差し伸べる。


「平気か?」


「ケビン様!」


「様はいらねえよ。俺はただの奴隷だ」


 肩をすくめたケビンは、近寄ってきた魔族を手当たり次第に斬り倒していく。

 無骨だが真っすぐな剣技は、魔族を一撃で殺すことに特化していた。

 魔力を流し込んだ剣は鋼鉄を遥かに凌駕する強度と切れ味で、魔族の硬皮や鱗を切断してみせる。

 いずれも人造勇者になったケビンが実戦による鍛錬で磨き上げた力だった。

 リリアはその強さにただただ感心する。


 二人は魔族の只中を進んでいく。

 飛んできた魔術を剣で弾きながら、ケビンはリリアに質問をする。


「あいつらを追ってんのか?」


「はい。何かできることはないかなぁと……」


「放っておいてもいいだろ。言っちゃなんだが、あんたが活躍できる場面じゃないと思うがね」


「それでも行きたいです。私の選択がこの状況を生んだ以上、最後まで見届ける責任があります」


 リリアは真剣な表情だった。

 それを見たケビンは深々とため息を吐く。


「……別に止めやしないがね。あんまり無茶すると追いつく前に死ぬぞ」


 ケビンが駆け出した。

 進路上の魔族を蹴散らす彼は、振り向いてリリアに告げる。


「俺の後ろをついてこい! バカ賢者のもとまで連れて行ってやるよ」


「あ、ありがとうございますっ!」


 リリアはすぐさまケビンの背中を追って走り出した。

 その直後、二人のそばにルーンミティシアが落下してくる。

 大地に穴を開けて派手に着地した彼女は、胸を張って宣言した。


「わたくしもお手伝いしますわ」


「ルーンミティシア様も……! ありがとうございます!」


 リリアは歓喜して頭を下げる。

 二人の人造勇者に守られる彼女は、彼方を行く賢者を見据えていた。


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