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第7話 お坊ちゃんはお人形さんが大好きなのね

侍女により飲み物とお菓子運ばれてきて、お人形さんとお坊ちゃんは美しい所作で優雅にお茶を楽しむ。


あからさまにおいしいと言った表情をするお坊ちゃんと違って、お人形さんは無表情だ。ここまで来ると賞賛に値する。


「昨日は何をしていらっしゃいましたの?」


お人形さんの静かな問いかけに、お坊ちゃんは待ってましたとばかりに口を開く。


「昨日は遠乗りに出かけていました。日差しも温かく、木々の緑も美しかったです。野の花々も美しく咲き誇っていました」


「そうですか。それは素晴らしいですわね」


「はい!あ、あの、暖かくなってきましたので……ヒルデガルド嬢も一緒にいかがですか?ぼ……私と……湖などに遠乗りに行きませんか?」


湖なんてこの国にあったかしら?ああ、確か王都の西の森に、恋人同士が訪れると永遠に一緒にいられると言う、ありがちな伝説の湖があったわね。


その前に現在のところ12歳のお坊ちゃんは馬は操れるけれど、お人形さんを馬に乗せてあげることができるのかしら?あからさまに18歳のお人形さんの方が背が高いけれど……。いや待てよ?貴族だから馬車か!うんうん、お坊ちゃんひとこと足りない!マイナス1点!


「……辿々しい物言いは減点ですわよ?次期公爵たるもの、はっきりとお言葉を出すことが必要ですわ」


うーん、そっちにマイナスか!惜しい!残念だったね!


なんて脳内友達とのぼっち会話は置いておき、答えじゃなくて、教育の言葉が返ってくるとはさすがお人形さん!


こうして見るとお坊ちゃんからは好き好き光線が出まくってるけど、お人形さんはまるで興味がない様だ。年下のかわいい子供だとも思っていない。


教師と生徒。しかも出来の悪い生徒。


お坊ちゃんは利発な方だと思うのだけど、注意されるのが嫌だからか、それとも好きすぎて空回っているのか分からないけど、うまく言葉を出せてない。


頑張れ、お坊ちゃん!オルガがついてるわよ‼︎


「……ですが、この時期に湖へのお誘いを女性は喜ぶと思います。発想は素晴らしいですわ」


なんだろう……凄まじく上から目線……と言いたけれど表情にはまるで変化がない事から、感情が伴っていないことが分かる。


やはり教師のようだ。しかも科目はマナーだな。


「あ――ありがとうございます!ではいつにしますか?」


お坊ちゃんはお人形さんの言葉を肯定と受け取った様だ。すっごくポジティブ。魔女の私もその前向きさに拍手を送りたい。


「……アウグスティン様のご登城のご予定は?」


「はい、僕は若輩者なので週3日勤務です。明日、明後日に登城する予定です!」


わー、お坊ちゃん嬉しそう〜、なんでこんなにお人形さんが好きなのかしら?


「ぼく?アウグスティン様は今、『僕』と仰いましたか?」


「あ――――」


お坊ちゃんは両手で口を押さえる。

その仕草がかわいい〜!じゃなくて!つまりお人形さんの教育で一人称を変更したのか……。道理で辿々しいはずだ。


「『僕』ではなく、『私』と仰ってください」


お人形さんは深くため息をつく。


お坊ちゃんが可哀想だから、やめてあげて……。ほら、お坊ちゃん、下を向いちゃったじゃないの……。小さくなっていくじゃないの‼︎小動物虐めてるみたいで、心が痛むじゃない!


「…………では3日後に迎えに来てくださいませ」


「はい!ぜひ‼︎」


その後はお坊ちゃんとお人形さんのたわいのない会話が始まった。ダメ出しされてもめげずに話しかけるお坊ちゃんは置いておいて――無表情のまま淑女の態度を崩す事なく会話をするお人形さんには白旗をあげたくなってきた……。


今回のお坊ちゃんの願いは『マリア嬢が火傷を負った(もしくは負いそうになった)原因を調べ、ヒルデガルド嬢を相思相愛の相手と結ばせる』だ。


このお人形さんが恋をする?あり得ない。私はお坊ちゃんの生涯を見届ける覚悟を少しだけした。

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