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第1話 私は美しすぎる魔女オルガ

人の気配を感じそっと黒壇の窓枠に近付く。

どうやら来客の様だ。白樺の木の様な薄く黄色がかった白馬に乗った人間が見える。


「……訪問者ね」

独りごちるのは、この静かな家に誰もいないからだ。


私の名前はオルガ。苗字はない。

苗字は日々の生活を営む、有限の人間の持つものだ。私の様な『魔女』には必要のないものだ。


魔女というと世間の人々はどの様なイメージを持つのだろうか。


《シワだらけの老婆?》


いえいえ、魔女達の中でも若輩者である御歳200歳超えの私でも、肌に皺はおろかシミひとつないわ。

魔女とは絶世期の状態で生き続けるものよ。

故に私の姿は18歳から変わらないわ。腰だって曲がっていないし、スタイルには自信があるわ。高くも低くもなく、どんな服でも着こなせる自信のあるバランスの良い体には、世の男性の瞳を釘付けにする豊満な胸がある。


《スタイルだけが自慢なの?》


そんなわけがないでしょう?スタイルの良さが霞むだけの美しさよ。

切長な瞳は翡翠の様な神秘的な光を放つ深緑色。少し邪魔ね……と思える位長いまつ毛。すっと通った鼻の下には、人の視線を誘うぷっくりとした膨らみのある唇。そして宵闇の空の様な青みがかった紫色の髪は、大きくウェーブしながら、私の背中を彩っている。


《でも衣装は体をすっぽり覆うローブでしょう?》


時代錯誤にも程があるわね。それは何世代前の魔女の衣装なのかしら?……呆れてものが言えない所だけど、良い機会だから教えてあげましょう。

私の今日の衣装は瞳の色に合わせた深緑色のマーメイドラインのワンピース。オフショルダーにしているのは、華奢な肩を見せるため。誰に見られていなくとも、おしゃれぐらいしなくては美女に生まれた意味がないわ。美しく産んでくれた両親にも言い訳が立たないわよね?


《両親がいるのか?》


いるに決まってるでしょう?木の股から生まれてくるなんて伝承を信じているなんて、随分と可愛らしいのね。両親は普通の人間よ。魔女は人間から突然変異で生まれてくる、魔力を持った別次元の生き物なの。


なんてひとりで誰かと会話ができるほどの、ぼっち生活を満喫している私の元に訪れる人間は限られている。それは古の魔女が交わした約束のせいだ。


遥か昔、魔女を虐げていた時代があったらしい。らしいと言うのは知らないからだ。周りの魔女に聞いても誰も知らない。500歳を超えた魔女に聞いたこともあったが知らないという。とりあえずそんなふざけた時代があり、魔女を優しく迎え入れてくれたのが、この国イクイルール。その恩返しのため、魔女はイクイルールの国民が強く助けを求めたら願いを叶えなければいけないと言う掟がある。


イクイルールの国民はそれを『魔女の恩返し』と言い、魔女はそれを『魔女のほどこし』と言う。


そもそも魔女の住む館は幽世かくりょはざまにある。

普通の人間には来れないものだ。だが、いにしえの契約により、強く願った人間には魔女の館への道が開く。そうなると魔女はどの様な理由があろうと断ることができない。


「良かった……お気に入りの服で……」

これが私の正直な感想だ。前に願いを叶えて欲しい国民が来た時には、どうせ誰も来ないし良いよね〜と思ってぼろぼろの作業着だったし、髪も適当に結んでいたし、更に化粧もしていなかった。それ以来、誰が来ても良い様におしゃれをすることにしたのだ。


《誰か来るのを期待してるみたいじゃない?》


ええ!期待してるわよ!だってぼっちは寂しいもの!脳内友達作るくらい退屈なんだもん!たまには刺激が欲しいじゃない⁉︎ だってだって、魔女だけど人間なんだものー‼︎


と心の中で会話してるうちに、久しぶりに現れたお客様は家の扉に辿りついたらしい。


大樹のうろに造られた赤い扉には、カウベルが付いている。


カランコロンとかわいく響いた音と共に、ここで良いのだろうかと不安気な表情をした人間が入ってくる。

だから私は両腕で身体を抱え、自慢ボディを更に絞りながら、ここが自分が一番美しい位置だと思っている角度で声をかける。


「いらっしゃい、ここは魔女オルガの館。あなたの望みは何かしら?」

不定期で投稿します。

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