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ドナーになる。

ある日、春人は紅美の主治医を訪ねた。


「先生、僕では田村紅美さんの、ドナーには

なれませんか?」


「色々な、検査をしてみないと、適合するか

どうかは分かりませんね、もし適合しても

君は、まだ未成年でしょう?ご両親の

同意が必要になりますよ。」


「分かりました。」

家に帰った春人。

両親に話をする、


「でも、まだ適合するか、しないのか

分からないんでしょう?もし適合したら

春人、入院中、大学はどうするの?」


「紅美の為なら、留年してでも、俺は

医者になるよ!だから、お願いします!

この恩は、必ず返しますから!」


「とりあえず、先に検査だな!」


「ありがとう!お父さん、お母さん。」

病院で検査をする春人。

結果が出た。


「辻春人さん、あなたはドナーとして

適合しますよ、ただ、リスクも有りますが

そこは、当院でフォローしますので、安心

して下さい。」


「本当ですか!先生、ありがとうございます、

書類を下さい、両親に同意書を、書いて

貰って来ます!」

書類を持って、紅美の病室に行く春人。


「紅美、紅美。」


「春人。」

弱々しい声だった。


「紅美、移植手術が出来るから!」


「えっ!ドナーが見付かったの?」


「今、目の前に居るよ!」


「春人が?」


「うん!検査したら適合するって、後は親に

同意書を、書いて貰ったらいけるから!紅美

もう大丈夫だよ!」


「でも、そんなの…春人は大学も、有るし

それに、おじさん、おばさんに迷惑掛けれ

無いよ!」


「何を言ってるんだよ!紅美は、どんな事を

しても、生きなくちゃ、いけないんだよ!」

泣いている紅美。


「春人、ありがとう、好きだよ!」


「うん、待ってろよ!じゃあ書類とか

準備が有るから、帰るけど頑張ってろよ!」


「うん。」

そして、その足で春人は、紅美の家に行った。


「は~い。」


「春人です。」


「春人君?ちょっと待ってね、どうしたの?」


「おばさん、紅美は移植手術が、出来るん

ですよ!」


「でも、ドナーが。」


「僕が、なれるんですよ!適合するんですよ!」


「うそ!」


「本当です、親の同意書が要るんで、この

書類、帰って書いて、貰います!」


「でも、ご両親は?」


「大丈夫です!ちゃんと書いて、くれるって

言ったんで!」


「春人君、何て言ったら、いいのか

ありがとうございます。」


「じゃあ、おばさん準備が、出来る迄

紅美を頼みます!」


「後で、挨拶に行くから、ご両親に伝えてね。」


「はい。」

紅美の母は、心から春人に、感謝した。

家に帰った春人。


「お父さん、お母さん、ドナーに、なれるって

すみませんが、これに署名を、お願いして

下さい。」

二人は、春人の顔を見て、もう揺るがない事が

分かった。

同意書に、署名をした。


そして手術の日


「紅美、今日だからな!一緒に頑張ろう!」


「うん、春人、好きだよ!」

二人の両親も、来ていた。

それぞれ、手術室に入る。


「今から、全身麻酔を、しますので。」


「はい。」

春人は、その後の記憶が、麻酔のせいで

無かった。

何度も、看護士さんに、名前を呼ばれ

返事をするが又、眠りに付く。

2日目には、意識が戻って来た。

病院に来た、両親に


「紅美は?」

と、聞くと二人が黙る。


「手術は成功、したんだろう?」


「あのな、麻酔をした後に、紅美ちゃんは

息を引き取って、しまったんだよ。」


「何だよ!何でだよー」


「じゃあ、俺、手術は?」


「中止に、なった。」

紅美の両親が、お礼に来てくれた。


「せっかく、ドナーに、なってくれたのに

ごめんね。」


「紅美は、喜んでると思うよ、春人君。」


「本当にありがとう、立派な、お医者さんに、

なって、紅美の様な人を、助けてね!」


「紅美も、きっと応援してるから。」


「それじゃ。」

と、言って紅美の両親は、帰り際に、紅美の

日記と携帯を、くれた。


「これは、春人君が持ってるのが、一番

いいと思うから、持ってて。」

意識が、もうろうとする。


(もっと早く、検査をしてれば、俺は何を

してたんだ!)

自分を責める春人。

麻酔も、切れたので退院して、家に帰った。

帰って来た息子に、掛ける言葉が無い、両親。


「おかえり。」


「ただいま。」

それだけ、言って部屋に入る春人。

ベッドに、横たわると


[春人、好きだよ!]

と、笑う紅美の顔、ばかりが浮かんで来る。

何日、そう過ごしただろうか。

春人は、携帯と日記帳を開けてみた。

携帯には、みんなで撮った、写メが

待ち受けに、されていた。

ラインには、二人の毎日の、やり取りが

残っていた。

涙が、こぼれ落ちる春人。

日記帳には、毎日


[春人、好きだよ!]

と、書かれていた。

そして、最後のページは、手術の前の日だった。


[大好きな春人。

明日は手術だね!

成功したら、春人はお医者さんに、

私は、何年掛かっても、看護士に

なるからね!

一緒に、病気で苦しむ人を、助けようね。


もし、私が死んでしまっても、泣かないで

私は毎日、沢山春人に好きだよ!って言って

春人に、受け止めて、貰ったよ!

最後には、ドナーに迄なって、私を助けようと

してくれて、私には、もったいない位

素敵な彼氏です!

ありがとう!

春人、大好きだよ!]

最後のページは、紙がグシャグシャに

なっていた。

きっと、これを書きながら、泣いていたんだ

ろう。


(紅美、大好きだよ!俺、ちゃんと医者に

なって、紅美との約束、病気で苦しんでる

人を助けるから、見ててくれよ!)


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