治療。
そして翌日。
学校で顔を、合わす二人。
「おはよう。」
と、先に春人が、声を掛ける。
「おはよう。」
と、紅美が返す。
沈黙が、しばらく続く。
「紅美、俺は紅美の側に居るから、だから
治療を頑張ろう!」
泣いてしまう紅美。
「春人ありがとう、好きだよ!」
紅美は嬉しかった。
春人が居たら、抗がん剤治療も、頑張れる
気がしたからだ。
高校を卒業すると、紅美は治療の為に
入院する事になる。
大学にも、行けない。
「じゃあ春人、私は明日から入院して
治療に専念するからね!」
「おう!」
「春人は、大学に行って、頑張って立派な
お医者さんに、なってね!」
「早くなって、紅美を俺が、治すよ!」
「フフフ、春人好きだよ!」
「紅美、俺も好きだよ!」
珍しく、春人は返事をした。
そして、入院生活は紅美の、想像を絶する
物だった。
「みんな、こんな辛い思いを、しながら
病気と闘ってるんだ、私も負けられない!」
夜は、春人からラインが来る。
《紅美、大丈夫か?》
《春人、好きだよ!》
毎日、これを繰り返す。
春人は、頑張れとは、決して言わない。
返事が来ると、安心する。
日曜日、春人は紅美の家に行った。
「おじさん、おばさん、僕を紅美に
会わせて貰えませんか?」
「紅美が、今の姿を春人君に、見られたく
無いんだって、女の子だから。」
「でも、どんなに変わっても、紅美は紅美
です、会いたいです、お願いします!」
「一度、紅美に言って、みるからね!
ありがとう。」
「はい、お願いします!それと、まだ
ドナーは見付かりませんか?」
「まだ、見付からないの、もう見付からないの
かなぁ?」
と、泣き出す良子。
「お母さん、しっかりしろ!今、俺達が
しっかりしないと、紅美はどうするんだ!」
「ごめんなさい、お父さん。」
「じゃあ、僕はこれで失礼します。」
肩を落とし、帰る春人。
(何で紅美が、こんな病気になるんだよ!
紅美は何も、悪い事して無いじゃないか!)
先生に呼ばれる、紅美の両親。
「抗がん剤治療が、あまり効果が見られません、進行の方が早いですね。」
「先生、もう紅美は、助からないんですか?」
「厳しいです。」
「後、どれ位、生きられるんですか?」
「最善を尽くしますが、半年は無理でしょう!」
あー。」
と、泣いて抱き合う、紅美の父と母。
何も知らない、紅美は治る事を、目指して
治療をしていた。
そんな、ある日
母が、可愛いい、ウィッグとコスメを買って
来てくれた。
「はい、紅美これ!」
「これって!」
「女の子だから、病院でも、お洒落を
しないとね!」
「うん。」
早速、ウィッグを付ける。
「どう?」
「可愛いいよ!」
「フフフ。」
と、笑う紅美。
「あっ、そうだ紅美、春人君が紅美に会いに
来たいって言ってるよ!」
「えっ、でもウィッグが、有るからいけるね!
ありがとう、お母さん。」
「じゃあ、春人君に言うよ!」
「うん!」
(春人に会える、久しぶりだな~)
日曜日
朝から、ウィッグを付けて、おめかしを
する紅美。
コンコン。
「はい。」
「俺、春人。」
「どうぞ。」
「久しぶりだな!」
照れる二人。
「どう?体調は。」
「相変わらずだね、早く春人ドクターに
診てもらわないと、駄目だわ!」
「ハハハ、俺?」
「うん!春人好きだよ!」
健気に笑う、紅美が愛とおしい春人。
「紅美?」
「ん?」
「何にも!」
「何それ~」
そして、笑う二人。
「紅美、それウィッグ?化粧してる?」
「うん、お母さんが、買って来てくれたの
きっと春人が、来るから気を利かせて!」
「紅美、今日、うちの両親も、来るけど
いい?」
「えっ!どうして?」
「紅美に、会って貰いたくて!」
「でも………」
「言わなくていい!」
そして、春人の両親が、やって来た。
「初めまして、紅美ちゃん春人の父です。」
「母です。」
「辛いだろうけど、頑張るんだよ。」
「そうよ、負けちゃ駄目よ!」
励まして、くれた。
すると、紅美の両親も、やって来た。
親同士、挨拶を交わしている。
それを、紅美と春人は、笑顔で見ている。
春人が
「そうだ!全員が揃ったんだから、写メを
撮ろうよ!せっかくだから、なぁ、紅美?」
「撮りたい、撮りたい。」
看護士さんに、無理を言って撮って貰った。
「嬉しい、これで毎日、見れるよ!力に
なるよ!」
「良かったね、紅美。」
「春人君の、お父さん、お母さんありがとう
ございます、負けない様に、頑張ります!」
「頑張るんだよ、じゃあ長居すると、身体に
障るから帰るね、又、来ますね。」
と、言って帰って行った。
「じゃあ、母さん私達も、帰ろう。」
普段、気の利かない、お父さんが春人と
二人にしてくれた。
「春人、この写メ本当に、嬉しい、春人の
お父さん、お母さんは、やっぱり優しい
人だね。」
「やっぱりって、何で?」
「だって、春人が優しいから、好きだよ!」
「ハハハ、その好きは健在だな?安心するよ!」
「でしょう?ラインでも、入れてるから
もう、どれ位言ったかな?数えとけば
良かった。」
「まだ、これから沢山、言うんだから
数え切れないよ!」
「そっか~」
「じゃあ、後は、ゆっくりしとけよ!」
「うん!」
「又、来るからな!」
「うん、春人好きだよ!」
「ハハハ、じゃあな!」
みんなが帰ると、やはり身体がキツかった。
その日を、境に紅美は弱って行った。
先生から、両親は
「ちょっと、厳しい状態ですね。」
と、告げられた。
両親は、目の前が真っ暗になった。
紅美の病室に行くと、しんどそうに寝て
いたので、両親はそっと帰った。
この状態を、春人には、告げた。