幸せな時。
ポカポカ陽気の、公園のベンチ。
ラテを飲む、カップル。
「春人、好きだよ!」
「おい、紅美お前それで、今日は何回目だ?」
「う~ん、10回目かな?」
「お前、毎日言ってたら、1年で何回言うんだよ!」
「私は、春人に何万回でも言うよ!」
「どうして?一回言ってくれれば、分かるよ!」
「どうしても、フフフ。」
と、ラテを飲む、紅美。
春人と紅美は、高校3年になって、付き合い出したばかりだった。
紅美には、春人に内緒に、している事がある。
二人とも、大学進学が決まっていた。
家に帰った、紅美すると、母の良子が
「紅美、大丈夫?明日は病院に、行く日
だからね。」
「うん、分かってる。」
そう、紅美は、白血病と闘っていた。
骨髄移植を、すれば良くなる可能性が
有るのだが、紅美に合う、ドナーが
見付からない。
今は、生きて学校に、行けてるのが不思議な位
なのだった。
大学進学を、決めたのも、そんな紅美の体で
仕事は無理だろうと、決めたのだ。
翌日
病院に行く、紅美。
先生が
「田村さん、体調はでうですか?」
「そうですね、今は落ち着いてます。」
「ドナーが、早く見付かればいいのですが。」
「先生、今迄、待ったんですから、諦めずに
待ちます。」
「そうですか、じゃあ、くれぐれも無理は
しない様にして、下さいね。」
「はい、ありがとうございます。」
紅美は、病院を後にした。
でも、そんな紅美を今日、学校を休むと
言って理由を言わない、春人が心配して
着けていた。
(紅美が、病院?何、これ?)
病院から、出て来る紅美を見て、驚きを
隠せない、春人だった。
夕方、何も知らない振りをして、春人は
紅美にラインをした。
《おい、サボリの紅美、公園でラテしよう!》
《O.K.今から、行くね!》
《ラジャー。》
二人は公園の、ベンチに座る。
「紅美、学校サボってんじゃ、無いよ!」
「ハハハハ、ちょっと家の用事でね、春人
好きだよ!」
「出た~紅美の好きだよ!が。」
「う~ん、好き、好き!」
「あ~分かったから、ラテを飲めよ!」
「うん、美味しいね!」
「そうだな!」
(紅美は、嘘をついた、何でだ?)
色々、聞きたいが、我慢する春人。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか?」
「うん。」
「明日は、サボんなよ!」
「うん、行くよ!」
「よし、じゃあな!」
「じゃあね!」
(春人、ごめんね、ちゃんと言わないと
いけないんだけど、恐くて言えないよ、
春人が、居なくなりそうで。)
「ただいま。」
「お帰り、どこに行ってたの?」
「春人と公園で、ラテ飲んでた。」
「紅美、春人君は知ってるの?」
「知らない、恐くて言って、無いから!」
「そうなのね。」
夕食
父の幹一が、帰って来た。
「紅美、病院はどうだった?」
「うん、今は落ち着いてるって。」
「そうかー良かったな、無理するなよ!」
「うん、お父さん、お父さんは、もし
お母さんが、病気だったら嫌?」
「そりゃなーやっぱり、元気な方が……でも
紅美、紅美のは、普通の病気じゃ無いから、
紅美が、気にするな!」
「ねぇ、普通の病気と、そうじゃ無い
病気って、いったい何なの?」
「それは………」
黙ってしまう、父と母。
紅美は、部屋に入ってしまった。
「お父さん、紅美は今、春人君に病気の事
隠してるのが、辛いんでしょうね、言って
しまうと、春人君が居なくなる、そう、
思ってるんじゃ、無いんですかね?」
「そうだな、紅美は何も、して無いのに
辛いな!」
翌日
学校に行くと、春人が
「サボリ、今日は来たんだな?」
「おはよう、来たよ、私は真面目だもん!」
「おっとーサボリの口から、真面目、宣言!」
「春人~遊んでるね?好きだよ!」
「はい、今日、早速一回目、今日は何回迄
行くんでしょうか?さぁ~田村紅美さん
意気込みを聞かせて、下さい!」
「新記録を、目指して頑張ります!」
「ハハハハ。」
笑い合う、二人。
「春人!」
「うん?」
「好きだよ!」
「もう、授業が始まるぞ!」
「うん。」
と、自分の席に、戻る紅美。
(私は、何時まで、こうして春人を、見て
いられるんだろう?)
お昼休み
「紅美、今日も、お弁当?」
「うん。」
パンを、かじる春人。
「春人、今日、お弁当とパンを、替えて!」
「何で?」
「私、今日はパンが、食べたいの。」
「じゃあ、うま~おばさんの弁当。」
「でしょう?愛情がたっぷり、入ってるからね。」
「美味しい~このパン。」
「そうか?」
「多分、工場で作ってる人の、愛情が
たっぷり、入ってるんだね!」
「そんな事、あるかい!」
「ハハハハ。」
笑う春人。
優しい、笑顔だ。
帰りは、何時も春人が、家迄、送ってくれる。
「ありがとう。」
「おう、又、明日な!」
そう言っていると、玄関が開いた。
母が出て来た。
「あら、春人君、何時もありがとうね、何か
飲んで、帰る?」
「いや、もう帰ります。」
「そう?又、遊びにいらっしゃいね。」
「はい。」
春人は帰って行った。
「いい子だね、春人君。」
「うん、本当に。」
紅美は、幸せ者だね~」
「お母さんも、でしょう?お父さんに
愛されて。」
「そう、私、幸せなの~」
「はい、はい、ごちそうさまです!」
「フフフ。」
笑う二人。
「今度の日曜日、春人君呼んだら?何か
ご馳走を作るよ!」
「うん、一回聞いてみる。」
「うん、そうして。」
「は~い。」
紅美は、部屋に戻ると、春人にラインをした。
《春人、日曜日お母さんが、遊びに来ない
かなって言ってるよ!》
《じゃあ、行くよ!》
《じゃあ、お母さんに、そう、言っとくね!
好きだよ!》
《出た~じゃあ日曜日な。》
《うん。》
「お母さん、日曜日、春人が来るって。」
「そう、じゃあ料理、頑張らないと!」
楽しそうな、母を見て、羨ましい紅美だった。