彼と彼女
いつものバスケの練習風景。
変わった事と言えば、柏木さんと私が付き合い始めた事をメンバーが知った事。
私は彼の練習風景を見つめる彼女になった。
「永井さん! 柏木さんと付き合ってるんですか!?」
速攻で聞いてきたのは、菊池さんだった。
「あ……はい……、そういう事になりまして……。 あ、でも、これまでと変わらないですよ! ちゃんとマネージャーの仕事はしますからね!!」
「そうなんですねーー。 ……まぁ、柏木さんならいい人だしお似合いだからいいですよね!!」
そう言って練習に戻った。
黒木さんには少し後にその話をされた。
柏木さんから直接聞いたみたいだった。
「柏木なら幸せにしてもらえるよ。 大丈夫だよ」
そう言ってくれた。
最後まで自分の気持ちを私に伝える事はなかったけど、それも黒木さんの優しさなのかなと思った。
本当に黒木さんもいい人。
黒木さんにも幸せになって欲しいなと思う。
初めて柏木さんの部屋で泊まった時、それなりの覚悟をして行った。
付き合い出した男女が一緒の空間にいる……。
いつかはそうなる時がからものだ。
でも、彼は手を出さなかった。
え?
いいのかな……?
まぁ、いっか……!
柏木さんは急いてないんだーー。
そんな風に思って夜を過ごした。
ぐっすり寝れた私も凄いけど、すっきりして朝を迎えると隣で柏木さんはもう起きていた。
「おはよう。 もう起きてたの?」
「……寝れなかった……」
「え? 何で? 私、寝相悪かった?」
「うん」
「えーー!! ごめんーー!!」
「……って嘘……。 萌ちゃんは静かに寝てたよ。 萌ちゃんが隣にいて寝れなかった」
「え? 何で?」
「俺、男だよ。 我慢してるのわからない? 今、男出してもいいけど?」
あ、そういう事か……。
「今はもう朝だし、仕事行かなきゃ……ね? 今日、練習もあるよ!!」
焦る私を見て柏木さんは笑っていた。
「じゃあ、仕事行く準備しよう! 途中まで送ってくよ」
私はこんな素敵な朝を迎える事ができた事に幸せを感じた。
付き合い出した事を橋田さんに報告した。
久しぶりに会いたいと言ってくれてコーヒーショップで待ち合わせした。
「久しぶりだねーー。 マネージャー、だいぶん慣れたでしょ? あいつら、元気なの? ……まぁ、聞かなくても元気だよね!!」
相変わらず元気いっぱいの橋田さんだった。
「で? 柏木と付き合い出したんだーー」
「はい……、そうなりました……。 橋田さんには伝えておこうと思って……」
「私からするとさ、今頃? やっと? って感じだったよーー! 最初にマネージャーの仕事、引き受けてくれた時に三人で会ったじゃない? あの時にさ、この二人、付き合ってないんだーーって思ったもん……。 だったら、時間の問題だろうなって思ってたけど、こんなに時間かかると思ってなかった!!」
「え? そうなんですか!? あの時、そんな感じはなかったと思ってたんですけど……」
「何だろうなぁ……。 何かお互いが出すものというか……思い合ってるんだろうな……って感じだったかな。 柏木のさ、元カノにも会った事あるけど、柏木自体がその目の前の恋愛に前向きじゃないというか……、何となく付き合ってるんだろうな……って風にその時は見えたんだよね……。 永井さんといるあいつはちょっと違ってた……。 空気感が違うというか……、大切にしたいんだろうな……っていうのを感じたからかな。 まぁ、長い付き合いの私の勘かな……。 たぶん私、あの時、二人付き合ってるの?って聞いたと思うよ。 言わなかったけかなぁ? そんなニュアンスの事。 あの時、柏木にコーヒー代のおつり渡さなきゃいけなかったんだよ。 何か理由つけてお願いしたと思うよーー」
そうだったかなぁ……?
マネージャーという仕事を引き受けるからちゃんと話聞いとかなきゃとそっちにばっかり気を取られてたから……。
でもおつりは覚えてる!
そう思ってたんだーー。
へぇーー。
空気感か……。
あの時すでに私は柏木さんに恋していたんだろうか……。




