親友
泣きじゃくるはっちゃんをしばらく待った。
机に置いたスマホを見ると、柏木さんから電話がかかってきたが今は出れない……。
はっちゃんと話す事が先だ……。
「出てもいいよ……」
着信に気付いたはっちゃんはそう言った。
「大丈夫。 後でかけ直すから……」
「柏木さん……?」
「……うん」
はっちゃんはきっとまだ柏木さんの事を思っているんだろうな……。
「はっちゃん……、柏木さんの事はごめん……。 私さ、初めてなんだよ、一緒に居て居心地がいい人……。 今まで男の人は信用できなくて、どこか冷めた目で見てたのに、彼には温かさを感じたの。 この人は今までの人とは違う。 それに自分が一番わかった。 楽しくて嬉しくてまた会いたいと自然に思ってしまった……。 柏木さんを好きになってしまった事……許してもらえないかな……」
私は私の柏木さんへの気持ちを伝えた。
はっちゃんはどう思っているんだろう……。
「ねぇ、萌ちゃん。 前に柏木さんに告白された時の事を覚えてる? 萌ちゃん、あの時ちゃんと柏木さんを見ようとしなかった……。 でも、柏木さんは違ってて入社して間もなかったかも知れないけど、ちゃんと萌ちゃんを見ていたよ。 萌ちゃんを見つけると必ず目で追ってたし……。 私は萌ちゃんと一緒に居たからそれに気付いたし、この人は本当に萌ちゃんのことを知ろうとしてるんだって思ってた。 だから萌ちゃんの隣にいる私に目は向かずともこの人はいい人なんだろうな……って思ってたよ……」
「いい人そうなのに、萌ちゃんは見ようともしなかった……。 もったいない事をするなぁ……って思ったよ……。 萌ちゃんはモテるからさ、まぁ、この人じゃなくても他にもいるよなぁと思ってた。 けどさ、柏木さんは当時と変わってなかったんだね。 再会した時に感じた。 この人は萌ちゃんへの気持ちは変わってない……って。 柏木さんの事は素敵な人だと思った。 けど最初から私は二人の間に入る隙なんてなかったんだよ。 柏木さんと二人で会ってた時も柏木さんは萌ちゃんの話ばっかりだった。 こっちは距離を詰めたくて会ってるつもりだったけど……全然……。 萌ちゃん、やっと柏木さんの事を白状したね……」
「はっちゃん……ごめん……」
「柏木さんの事は大丈夫。 最初から私じゃないと思ってたから……。 ちゃんと付き合ってあげて……」
「はっちゃん……、これからも変わらないでいてくれる? はっちゃんはやっぱり友達でだから……」
はっちゃんは私を真っ直ぐ見てこう言った。
「萌ちゃん、私は萌ちゃんを悲しませる事をたくさんやってきた。 その都度、心がスッとしてる自分と嫌悪感でいっぱいの自分が存在して気持ち悪さで残った。 私は萌ちゃんに謝らなきゃね……。 ごめんね……」
久しぶりにいつもの二人に戻れた気がした。
はっちゃんとこれからも変わらず友達でいられる。
私はそれが嬉しかった。
話し終えた私たちはカフェを出た。
私は柏木さんに電話をかけた。
柏木さんは今家にいるらしい。
迎えに行くから待っててと言われたが断った。
これまでずっと私を見つけて来てくれた。
いつも、どんな時も。
今度は私が柏木さんを見つける番。
「今から行くから、待ってて」
私は大好きな人に会いに行く……。
やっと胸を張って大好きな人に大好きと言える……。




