真実へ
体育館に着くと、最後の練習メニューをしているところだった。
私が体育館に入るとみんなが元気に挨拶をしてくれる。
バッシュのキュッ、キュッという音が心地よく、いつの間にかこの空間が居心地のいいものへと変わってきていた。
練習に邪魔にならない様に片付けを少しずつしながら終わるのを待った。
私は片付けをしつつも心ここに在らずで、今まではっちゃんが話していた事を考えながら、金子さんの話してくれた答えに結び付け様としていたが全然結び付かず、さらに深く考えていた。
その時、ボールが飛んできた事にも気付かず、腰に当たってしまった。
いつもなら避けれたボールなのに、コートにいたメンバーも心配そうに見てくれていた。
慌ててボールを取りに来た菊池さんが心配そうに声をかけてくれた。
「大丈夫?」
「ごめんなさい! ボーッとしちゃって……。 大丈夫です!」
ボールを取りコートに戻って再び練習が再開した。
私は深く息を吐き、目の前の片付けに集中した。
しばらくして練習が終わり、柏木さんが声をかけてきた。
「萌ちゃん、ちゃんと話せた……?」
心配そうにそう聞いてくれた。
「ちゃんと話せたと思う。 大丈夫。 もう会いに来ないと思う……」
そう言っている私なのに、何だか浮かない顔だった私を柏木さんは見逃さなかった。
「でも、何でそんな浮かない顔してるの? 何か言われた?」
「……後で話そう……。 今日も一緒に帰っていい?」
「当たり前ーー。 俺はそのつもりです。 わかった、じゃあ、後で話そう。 さっきのボール、大丈夫だった?」
「あー、さっきのは平気……」
「それならよかった!」
浮かない顔をしていたかも知れないが、柏木さんが一緒に居てくれるという安心感に包まれていた。
どこから話していいかまだはっきり考えれてなかったけれど、私なりに話してみようと思った。
帰りの車の中、金子さんに聞いた話を柏木さんにした。
「わかってもらえたみたいでよかったね。 ただ……その市原さんの事ってどうなんだろうね? 何か意味があるのかな……?」
「やっぱりはっちゃんに聞かなきゃダメだよね……」
「そうだねーー。 萌ちゃん、聞ける?」
「大丈夫……。 あ、柏木さんははっちゃんと電話をよくしてたんでしょ? その時に私のそんな話はなかったの?」
「俺、あんまり電話してないよ。 それに俺が市原さんに会って話す時って萌ちゃんの事を俺から聞いてた感じだよ。 市原さんからは萌ちゃんが今悲しそうで…‥とか言う話を聞いたら俺は飛んで行くのに……。 俺は聞いてない……」
はっちゃんは柏木さんと毎日連絡取り合ってるって言ってたと思うけど、柏木さんはそんな風じゃない……。
また違和感だ……。
やっぱりはっちゃんに聞かなきゃな……。
明日会社で少し話せるかな……。
でも会社で話せる事でもないし、仕事終わりの方がいいのかな……。
「今、連絡しておけば? ちょっと話したい事があるんだけど、時間取れない?みたいな感じで連絡しておけば返事返ってくるんじゃない?」
思い詰めた様子の私にそう言った。
「俺たちの事、いつ言うの? 萌ちゃんのタイミングでいいけど、市原さんにも言うつもりなんでしょ? それもあるし……」
そうだ……。
はっちゃんに、柏木さんとの事も伝えなきゃ……。
はっちゃんには悪いと思ってるけど、これだけはどうにもできない……。
悲しませてしまうかも知れないし、怒らせてしまうかも知れないけど……。
私は携帯を持ち、はっちゃんへ連絡する為の文字を打ち始めた……。




