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君の事なんて  作者:
48/65

うそかほんとか

 金子さんははっちゃんから何を聞いたの……?

 はっちゃんは金子さんにどんな事を話していたんだろう……。

 私は今伝えられた話を信じる事ができず、でも、金子さんも嘘をついている様には見えない事にこれから知る真実を知らない方がいい様な気がしてならなかった。


 けれど、何が真実で何が偽りなのか全くわからない状況を続ける訳にもいかない……。

 私は今目の前にいる金子さんの話をとりあえず全て聞く事にした。



「別れてから一度電話してくれたよね? 私、折り返さなかったけど……あれは?」



「……あぁ……、あれは萌に好きな人ができたみたいって聞いて……、直接話がしたかったんだ」


 私、はっちゃんに何も言ってない……。

 なのになぜ、そんな話を金子さんにしたんだろう……。



「はっちゃんからそう聞いたの……?」



「俺、萌を忘れられなくて……。 別れたし……、萌が他の誰かを好きになるのも仕方ないけど……でも、俺を忘れて欲しくないと焦ったんだ……」




「最近ね、うちの近くでよく会ってたじゃない? あれは私に会いに来ていたんだよね……? どこかで待ってたの……?」


 恐る恐る聞いてみた。



「はっちゃんから、飲んだ後のほろよいな感じで電話がかかってきて……萌も結構飲んで今帰ったから大丈夫かなー?って話聞いて一緒に居てやりたいと思って会いに行ったりもした。 はっちゃんから萌の話を聞く度に会いに来た。 何か悲しそうだったって聞くと一緒にいてやりたくて行った事もあったし……」


 悲しそう?

 はっちゃんは私の何をみて悲しそうだと言ったの?


 はっちゃんがそう思ったのなら、はっちゃんからいたわりの言葉をかけてもらっても不思議じゃなかったけれど、そんな言葉もかけられなかった。

 

 はっちゃんは金子さんにいろんな事を話してたんだ……。 でも私が言った事がひとつもない……。



「萌は俺を必要としてるんじゃなかったんだね……。 はっちゃんの勘違いだね……。 俺はその話を本気にしちゃってたよ。 まだ萌が俺を必要としてると思ってた……。 萌、ほんとに好きだったよ。 奥さんとも別れないし都合いい話だけどね……」




「金子さんは子供も生まれたんだよ。 奥さんと3人て幸せにならなきゃ……。 もう私のところへは戻ってきちゃだめだよ。 お互い、別々の道へ進まなきゃ……。 私たち友達に戻ろう……」




「そうだね……、戻ろうか、友達に……。 萌も幸せになれよ……」


 一緒にカフェを出て金子さんは駅へ、私は小学校へ歩き始めた。

 これで本当におしまい。

 金子さんとの話はすっきりしたのに、後味が悪い感じだった……。


 金子さんの話は私にとっては全く理解できなかった……。

 金子さんの話の中に必ず現れるはっちゃんの名前……。

 はっちゃんが思う事があってしていた事なのか……。

 でも何で私に何も言ってくれなかったんだろう……。


 私が結構飲んだから心配する事や悲しそうにしてるっていう情報を金子さんに伝えた意味は何だったんだろう……。


 小学校までの道を歩きながら、柏木さんにどう説明すればいいか考えていた。

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