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君の事なんて  作者:
46/65

お互いの気持ち

 車を走らせ海までやってきた。

 ここからは、船の発着や灯台が光るのが見える。

 車を停められるスペースに停め、少し歩いたところで止まった。

 まだ船は運航していて、今から出発する船が汽笛を鳴らしていた。


「まだ最終じゃないんだねーー」


 船が出発したのを見てそう言った。

 船はどんどん沖へ行き、船の灯りが小さくなってゆく。



「さっきの続き……、俺ね、黒木と楽しそうに話してる萌ちゃんを見たくなかった。 その笑顔は俺だけに向けて欲しかった、勝手だけどね。 黒木ともケンカしたし……。 黒木にも謝らなきゃ…。 萌ちゃんにも酷い事言ったし……、ごめんね……」


 柏木さんは海を見ながら謝った。



「私もね、柏木さんに謝らなきゃ……。 金子さんの事、私も悪いと思う……。 悲しくて悲しくて金子さんに頼ろうとしたの……、一瞬でも。 何も考えられなかったとしてもあるべき行動じゃなかった……」



「何を……」



「……キスを……」


 柏木さんは黙ったままだった……。

 しばらくして話し始めた。



「悲しくてって言ったけど、何があったの? 俺が聞くのじゃダメだったの……?」


 私だって嫉妬だ……。

 はっちゃんに柏木さんとデートと聞いて悲しかった。

 自分の気持ちに気付いたのが遅かった……。

 そう思った。



「幻滅したよね……。 私も嫉妬なんだよ……。 柏木さんとはっちゃんがデートって聞いて……。 自分の気持ちに気付くのが遅かった……。 私は知らないうちに柏木さんを好きになってた……。 でも、はっちゃんは大切だから……。 柏木さんじゃダメだったんじゃない。 柏木さんがよかったの。 けど、叶わなかった……。 何も考えられず気付いたら駅で降りてて……金子さんに会って……知らないうちに部屋まで入ってた……。 しっかりしないとね……」



「俺、市原さんと何もないよ……。 デートって何? お茶はしたけど、萌ちゃんの事話しただけだよ」


 付き合う方向じゃないの……?



「はっちゃんと付き合うのかな……って思ってた……」



「俺が付き合いたいのは萌ちゃん……、それは変わらない……。 じゃあ、付き合ってくれるの? 萌ちゃんが好きだよ……」


 気持ちが繋がった……。

 ほんとに嬉しかった……。

 けれど……。



「嬉しいの……、私も好きだから……。 けど、付き合うのはちょっと待って……」




「もう待てない……。 って嘘。 萌ちゃんが待って欲しいなら待つよ。 でももう俺の彼女だからね!」


 そう言って私を抱きしめた。


「やっとハグできるーー!!」



「何それ……」


 お互い笑顔が溢れる。

 抱きしめられた暖かさと幸福感を噛みしめていた。



「でも、約束して。 もう金子さんと会わないで。 もうキスされるの嫌だよ……」


 でも、ちゃんと話しなきゃいけない人だ。



「もう一回だけ会う。 ちゃんと話したい。 確認したい事もあるから……。 けど、もう部屋で会ったりしない。 誰かがいるところで会う。 ちゃんと終わりにしたいの。 だからお願い……」



「じゃあ、会う時、俺に言ってくれる?」



「言う……。 柏木さんに隠す様な事はないから……。 ……で、もう離さない……?」


 抱きしめられたままなのを外そうとした。



「ダメーー。 もうちょっと! だってずっと待ってたんだよーー。 もっと幸せを感じさせてよーー」


 柏木さんに抱きしめられた温もりは幸せそのもので、離さない?と言いつつも本当はずっとこのままでいたかった。

 さっきまで友達だった人が彼になった。

 正確には彼と呼べるのは少し先になるけれど……。

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