疑問
目の前のアイスティー。
私は手をつけずに柏木さんの言葉を聞いていた。
でも、どう聞いても理解ができない……。
「俺から聞いていい?」
柏木さんから話を切り出した。
「いいよ……。 何……?」
「萌ちゃんさ、俺を避けてたでしょ? 何で? 俺、何かしたの?」
ほんとだ……。
黒木さんが言っていた通り、柏木さんも私が避けているのを気付いてた……。
「……何もしてない……」
「じゃあ何で? 何かあった? 俺、萌ちゃん見てるからわかるよ。 最初は萌ちゃんから言ってくれるのを待ってたんだよ。 けどさ、いつまで経っても言わないし……」
ちゃんと見てくれてた……。
誰に対してもそんな優しさを振りまくなら、それは罪だ……。
私にはその優しさが辛過ぎる。
「柏木さんは優しいね……。 けどね、その優しさが辛い人だっているんだよ……」
「萌ちゃんに優しくするのは当たり前でしょ? 好きな人が元気ないのにさ、どうしてスルーできるの?」
え……?
どういう事……?
「……え? ひとつ聞いていい? 柏木さんの気持ちって変わってないの……?」
「変わったって言った事、ある?」
柏木さんは私を見てそう言った。
その言葉は力強く、嘘を言っている様には聞こえなかった。
だとしたら……どうして……?
「え……、でも……はっちゃんと……」
「はっちゃん? 市原さん? 市原さんがどうしたの?」
私はどこから話していいのかわからず戸惑っていた。
はっちゃんの事もあるし、差し障りのない事だけ聞く事にした。
「あの……、定時後に柏木さんの車に乗ってはっちゃんとどこかへ行っているのを見かけたから……」
「あー、この前、コンビニで会った時? 前の日にメッセージが来て、萌ちゃんの話してたんだよ。 萌ちゃん、最近、俺に冷たいからさ……。 そんな話してたら、市原さんが話聞いてくれるっていうからカフェでお茶したんだ。 それ?」
何か話が違ってて頭の中で整理するのに必死だった……。
でも……はっちゃんの気持ちは……。
私ははっちゃんの事が気になってそれ以上の事を聞く事ができなかった。
柏木さんの話が本当なら、まだ自分を思ってくれている事が今でも続いてくれているなら……と、嬉しくなった。
ただ、心の底から喜べない……。
この心のモヤモヤを払拭しないと……。
でも、はっちゃんにどう聞いていいかわからなかった……。
「萌ちゃんは何かあったんでしょ? 俺に言えないの? 聞かない方がいい?」
私は母の話をし、話を聞いて欲しいと思ってきっと剣道だろうと体育館へ行こうと思ったが行けなかったと、行ったけどはっちゃんがいたから引き返したという事は言わなかった。
「電話してくれたらよかったのに……。 でも、俺に聞いて欲しいと思ってくれたんだね。 それは嬉しいよ……」
私は柏木さんに好きだという気持ちを伝える事ができなかった。
今じゃない……。
タイミングって大事だから……と焦る気持ちも間違いなくあった。
でも、はっちゃんの事を考えてしまう。
一度はっちゃんにいろいろ聞かなきゃいけないのかな……。
柏木さんの話が本当なら、はっちゃんと柏木さんの温度差はどこから生まれたんだろう……。
なぜ、柏木さんとデートだと言ったんだろう……。
そこに触れていいのかもわからないが、聞く以外なかった。
はっちゃんの話を聞かないと何もわからない……。
久しぶりに柏木さんに会ったのに、楽しさや嬉しさを感じる事ができなかった……。




