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君の事なんて  作者:
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許されない事

 金子さんは運送会社の配送ドライバーで、私より九歳年上の四十三歳。

 奥さんと結婚して今年で十年になる。

 私と出会う前から妊活をしているが、まだ恵まれていない。

 私と不倫しながらも離婚の話は出てきた事はない。

 仲はいいんだと思う。


 それに、私も離婚を望んでいない。

 金子さんは嫌いではないが自分のものにしたいとか、結婚したいとか、そういう気持ちは全く持っていなかった。

 確かに金子さんは話しやすいし私にとってはいい人だった。


 でも、奥さんがいるのに私と深い仲だなんて世間一般ではいい人とは言わない。

 私もそう思う。

 男の人ってセックスできればそれでいいんだ。


 そう思いながらも金子さんと関係を続ける私も最低だ……。



 金子さんが私のアパートにやってくるのは決まって夜。

 早番で仕事が早く終わる日は必ずやってくる。

 軽くシャワーを済ませ、少しだけごはんを食べる。

 たくさん食べて帰って奥さんの作ったごはんを食べれないといけないからだ。

 シャワーも汗を流す程度。

 ボディソープの匂いプンプンで帰るはずはない。

 泊まる事も殆どしない。

 一年に一度、あるかないか……。


 バレない様に徹底していた。

 奥さんとは別れる気はないのはよくわかる。


 一度聞いた事がある。



「バレない様に徹底できるの凄いね」



 すると金子さんはこう言った。


「萌と別れたくないから。 だから頑張ってるんだよ」



 奥さんと別れるつもりもなければ、私とも別れるつもりはない……か……。


 奥さんとは精神的に繋がっていて、私とは体で繋がっていたい……って事か……。



 それを聞いても私は他人事の様に思っていた。



 それは奥さんがかわいそうだよね……。



 そう思うのに金子さんとの関係を続けられる自分……。


 ただ、必要とされたい。

 私じゃないとダメなんだ、自分という人を愛して欲しい。

 それがねじ曲がった愛でもよかった。

 ただ、ただ、誰かの必要な人でありたかった。


 そんなに愛されたいのに、自分のこれからの事はどうでもよかった。

 何となく生活をして、何となく彼がいて……彼がいなければ一人でもいい、何となく生きていければいい。

 将来に夢も希望もなければ不安もなかった。



 だからと言って不倫は良くない……。

 何となくだから不倫しても大丈夫……な訳がない。

 ダメな事はダメ……。

 他人に思う事と自分がしている事との矛盾に嫌気がさす。



 いい加減、やめよう……。



 私は金子さんのと別れる事を決意した。

 どのタイミングで言えばいいのか……そのチャンスを探していた。




 ある日のお昼休み、はっちゃんと会社の屋上でお昼ごはんを食べている時だった。

 ほんとにいいお天気で気持ちいい。

 気持ちよくお昼ごはんを食べている時に私の携帯が鳴った。

 金子さんからのメールだった。



 『今日、行っていい?』



 今日は来ないと思っていたのに……。

 特に用もないし、今日が別れを切り出すチャンスかもと思いメールを返した。



 『いいよ。

  ちょっと話したい事もあったから……』



 その光景を見たはっちゃんが、意味ありげにニヤニヤしながら興味津々に聞いてきた。



「ん? 今、付き合ってる人? 聞いてないけどーー」



「あ、いや、違うよ。 友達」



「そうなのーー? 萌ちゃん、ずっと彼氏いないねーー? 好きな人とかいないの?」



「……いないねぇ……」



「萌ちゃん、モテるのにーー。 今度、誰かに言われたら付き合ってみれば?」



「……そうだねぇ……」



「何それ? 彼氏、欲しくないの?」



「そうじゃないけど……。 きっと男の人に偏見があるのかな……。 お父さんの影響かな」



「そっかーー。 でもさ、女は恋をしたら綺麗になるよ! 萌ちゃん、かわいいけど今よりもっと。 という事はさらにモテるでしょ、言う事ないよね! だから恋なんだよ! 彼氏作ろうよーー! 現状に満足しないで!」


 誰かに恋すれば金子さんともすんなり別れられるかな。

 でも誰かを好きになるってそんな簡単じゃない……。



「そうだね。 誰か見つけないとね……」



「また、金子さんと飲みに行く? 男の人、紹介してもらおうよ! 久しぶりに連絡取ってみようかなーー」


 金子さんという名前にドキっとした……。

 はっちゃんにも言っていない金子さんとの関係……。



「ほんとだねーー……」


 これからの事を楽しそうに話すはっちゃんに返す言葉が見つからず、ただ一言何とか返した感じだった。

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