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君の事なんて  作者:
29/65

予想外の展開

 一通りの練習が終わり、片付けに入った。


「萌ちゃん、救急箱、あるでしょ? 一緒に帰ろう」


 柏木さんがそう言ってくれた。



「ありがとう……。 でも、いいの? この後予定ないの?」



「汗かいて行けるとこないよ……。 あ、汗かいてるの嫌?」



「違う! 嫌じゃない……!! いいのかな……と思っただけ……!」


 全力で否定した……。



「じゃあ、一緒に帰ろう。 あ! 菊池、何だったの?」



「【黒木さんの後輩、犬みたい】って書かれてた。 ねぇ、犬みたいって何……?」


 柏木さんはその意味に気付いて笑っている様だった。



「あーー、たぶん……忠犬ハチ公みたいって事かな……。 黒木に忠実って事? 橋田に聞いてみた? たぶんそんな感じだと思うよーー」


 それで犬……か……。

 しっぽ振っていつも笑顔でワンワン言ってそうなイメージなのかな……?


 片付けが終わるとみんなが私のところに寄ってきた。


「永井萌さん、初めまして……」


 ほとんど初めて会う人たちで誰が誰だかわからない。

 私は目で柏木さんに訴えた……。



「名前言わなきゃ、萌ちゃんが誰がわかんないでしょ……」


 ちゃんと察してくれてありがたい……。

 そのあと、いろんな人が立ち替わり入れ替わりで自己紹介をしてくれた。


 菊池さんの番……。

 私は最初からニヤニヤしてしまった……。

 もう忠実な犬にしか見えないのだ……。


「菊池です! よろしくお願いします。 で、また飲みましょう!」


 菊池さんは、黒木さんに私が他の人の時より菊池さんの時に笑ってくれたと話していたが、笑いを堪えられなかっただけだった……。

 黒木さんに気のせいだと諭され、憤慨していたが、その通りです……、とは言えずそっとその場から離れて柏木さんのところへ行こうとした時、黒木さんから声をかけられた。


「永井さん、送って行こうか? 荷物、多いでしょ?」


 みんな気にかけてくれるんだ……。

 優しい人ばっかり……。



「あ、大丈夫です。 柏木さんが送ってくれるみたいなんで……」



「そうなんだ。 じゃあ大丈夫だね……」


 自宅を聞くと反対方向だった。

 それは逆に申し訳ない……。


「気にかけてくれてありがとうございます」



「永井さん、また飲もうね!」



「また……」


 私は車に荷物を積み込んで準備する柏木さんの方へ向かった。

 

「じゃあ、帰ろっか……」



「ありがとう。 いつも送ってもらってばっかり……。 今度は私が送ってあげるね……」



「女の子なんだから横に乗ってればいいの。 俺はそう思うよ。 でもそれ、楽しそうだねーー。 一回、やってみる? じゃあ、今週の土曜日は? 予定ある?」



「ううん……。 予定ない……」



「じゃあ、決まりね! また後でいろいろ決めよう!」


 女の子扱いされたのが嬉しかった。

 柏木さんって女の子みんなにこんな感じなのかな……。

 でも、そうやって連れ出してくれるのは嬉しい。

 嬉しいのに心が晴れないのはどうしてだろう……。

 はっちゃんの事はどう思ってるんだろう……?



「ねぇ? 昨日、はっちゃんとメッセージのやり取りしたんでしょ……?」


 私は唐突に聞いてしまった。



「やり取りというか……、2ラリーくらいかな……?」


 あれ……? もっと長い時間やり取りしてたのかなって思ってた……。

 それ以上、はっちゃんをどう思ったとかそういった話を聞けなくなってしまった。


 きっと、こうやって送ってくれたり、気にかけてくれたり、外へ連れ出してくれたりするのは、私の事を悪い様には思ってないのかな……とは思う。

 嫌いな人にここまでの事はしない。

 柏木さんにとって私ってどうなんだろう……と自然に思ってしまった事にハッとした……。


 柏木さんは友達。

 私の不倫の事を知ってる唯一の人。

 柏木さんにもそれ以上の感情はないはず……。



「柏木さんのタイプってどんな人?」


 柏木さんのタイプを知る事でさっき一瞬でも思ってしまった事を打ち消そうとした。



「え? 萌ちゃん。 そりゃそうでしょ? 俺、一回告ってるんだよ? そんな、タイプ、ころころ変わんないよ……」


 それってどういう意味……?

 タイプだけど今は友達って事……?

 はっちゃんの事はどう思ってる……?



「え? まさか、俺の気持ちに全く気付いてないの?」



 え……?

 気持ちに気付いてない……?

 どういう意味……?


 打ち消すどころか逆に意識してしまう……。

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