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君の事なんて  作者:
17/65

幸せの方向

 入ったカフェでも金子さんの話題は続いていた。


「ほんと、びっくりだよねーー。 もうすぐパパなんだーー。 楽しみだろうなーー。 奥さん、綺麗な人だったね!」


 何も知らないはっちゃんは金子さんの話を続けてた。



「ほんとだね。 綺麗な人だったね」



「萌ちゃんと金子さん、お似合いだって思ってたけど、あの奥さんじゃ勝てないねーー」



「勝てないも何も……、そもそもの話だから……」


 お似合いか……。

 はっちゃんはどこを見てそう思ったんだろうな……。


 金子さんからのメール。

 奥さんの目を盗んで打ったのかな……。


 でももう弁解する事もないんだよ。

 私たちは友人に戻るだけ。


 私はシューズを買いに来た事も忘れ、これまでの金子さんとの事ばかり考えていた……。

 たまたま私だっただけできっと、私が相手でなくてもよかったんだろうな……。

 改めて5年も関係を続けた事を申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 今がほんとに元に戻るきっかけなんだ、私はそうとしか思えなかった。

 金子さんのこれからの事、自分の将来、ちゃんと考えなきゃ……。


 はっちゃんには悪いのでカフェで解散し、私は今日見て回ったお店の一つに戻り、シューズを買う事にした。


「じゃあ、萌ちゃん! またね! シューズ、買ってきてね!」



「うん。 今日はありがとう」


 はっちゃんを見送り、お店へと向かう。

 あの白いシューズは今までの私を変えるきっかけのシューズ。

 そうなってもらわないと困るシューズ。


 私はお店に戻り、その白いシューズを手に取りカウンターへ持って行った。

 お店の人がシューズの入った箱を丁寧に紙袋に入れて渡してくれた。


 白いシューズを手にした私は家へと急いだ。

 連絡をすると言っていた金子さんからの連絡を待つ為。

 もう、今日で終わり。

 お互いに迷いなく別れられる気がしていた。


 金子さんとの話に備え、私は家で張り詰めた気持ちを掃除をしたり作り置きを作ったり自分を忙しくさせる事で拭おうとしていた。

 何かをしていないと落ち着かない。

 窓掃除を始めたところで電話が鳴った。


 金子さんだと思い緊張しながらスマホの画面を見ると、かけてきたのは父だった……。



「どうしたの?」


 何ヶ月ぶりだろう……?

 実家にも1年以上帰ってない……。



「あ、萌? 元気にしてるか? 母さんの方で親族が集まるんだって。 その連絡が連絡が来て萌に電話したんだ。 行くかなと思って……」



「そうだね……、おばあちゃんやおばさんたちにもずいぶん会ってないから会っておかないといけないよね。 行くって言っておいて」



「まだ少し先の話らしいけど、また近くになったら連絡くれるって言ってたよ。 萌、またこっちにもたまには帰って来いよ」



「うん……。 また帰る……」


 父と久しぶりに話をした。

 気持ちが落ち着かない時だったけれど、父と話し、少し気持ちが穏やかになった様な気がした。

 いろんな思いがある父だが、やはり血の繋がった人なのかな……。


 いちいち聞かないけれど、彼女らしき人はいるのかな……と思う。

 でも何で再婚しないんだろう……。

 どの人とも長続きせずで、本当に大切だと思う人を見つけたのなら再婚すればいいのに……。

 やはり、軽く付き合いたいだけなのかな……。

 軽くって何なんだろう……。


 やっぱり父は嫌だ……。



 夜9時前、金子さんからの連絡が来た。

 どんな事を話すんだろう……。


「萌、今日はびっくりさせてごめん……。 萌がいると思わなくてびっくりした……。 わかってると思うけどもうすぐ子供が生まれるんだ……」



「うん……そうみたいだね。 おめでとう。 よかったね、ずっと妊活してたでしょ? 願いが届いたね」



「萌……、俺たち別れなきゃいけない?」



「別れなきゃいけない。 もう辞めよう。 もっと早くに辞めるべきだった。 綺麗な奥さんだし! 子供も生まれるんだよ! 金子さん、パパになるんだよ。 その子と奥さんを大事にしなきゃ……」



「萌は俺から離れても平気なの?」



「平気……。 友人に戻れるよ。 金子さんも同じだと思うよ、きっと。 考えてみて。 私たちは恋焦がれる程思い合っている訳じゃなかったでしょ。 何となく始まっちゃったんだよ。 お互いの傷を舐め合ってたのかな……。 だから、もう2人で会わない、うちにも来ない。 金子さんは家族のところにだけ帰って……」



 時間にして40分くらいだったかな。

 冷静に話せた……。


 私は5年の不倫を終えた。

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