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君の事なんて  作者:
16/65

決定打

 土曜日の朝に話して以来、金子さんからは連絡はなかった。

 これからの事を考え始めたのかも知れない。

 進むべきいい方向へ進めればいい……。


 出社したはっちゃんから声をかけられた。


「萌ちゃん、おはよう。 あの金曜日の話、なになにーー? どういう事ーー?」


 そう言えば、はっちゃんに家に帰ってから連絡したんだっけ……。

 柏木さんに会ったんだ……。



「おはよう。 はっちゃんは、吉岡さんとのお茶はどうだったの? 楽しかった?」



「え、まぁ、普通に話したって感じかな。 それより、どういう意味? 柏木さんと一緒に帰ったの? 金子さんはお役御免で去って行ったって事!?」



「金子さん、逆方向なのに申し訳なくて……。 少し先のコンビニで柏木さんと会ったの。 柏木さん、帰り道一緒だし……、で、金子さんにそこで引き返してもらったんだよ」



「そうなんだ。 でもさ、金子さんと萌ちゃんが二人で歩いてるのを後ろから見てお似合いだなーーって思ったよーー。 金子さん、結婚してるから残念だけど…….」



「お似合い? そうかな……? 金子さんはいい人だよね……」


 いい人だけど、私と不倫してたんだよ。

 ダメだよね……。

 そんな私もダメだよね……。

 ここまできたらはっちゃんには、私たち不倫してました…‥なんて言えない。

 もう、隠し通す覚悟でいた。



「それで、柏木さんの飲み会の方は? 聞いた?」



「あ、何かね、また連絡してくれるって」



「そうなんだ! じゃあ、楽しみに待ってよーっと! 萌ちゃんちと柏木さんちは近いの?」



「車で5分くらいかな……」


 何となく、車に乗せてもらった事は言わなかった。



「じゃあ、近いねーー」



「それでさ、柏木さんにバスケのマネージャーやらない?って誘われて……やる事にした」



「柏木さんってバスケやってるの?」



「やってるみたい。 大学までは剣道って言ってたけど……。 詳しくは聞いてないからわからないけど……。 シューズ、買いに行かなきゃ……」



「じゃあ、一緒に見に行ってあげるよーー。 マネージャーかーー……。 何か憧れる響きだねーー」



 週末、はっちゃんが買い物に付き合ってくれる事になった。


 週末、はっちゃんと待ち合わせ。

 予定時間より少し早めに着いた。

 はっちゃんと出かけるのも久しぶりで私は楽しみにしていた。

 いいシューズが見つかります様に……。

 買い物がメインだけれど、女子が集まれば自然と話も弾む。

 楽しい時間を過ごそうと思っていた。



「おまたせ!」


 時間通りにはっちゃんがやって来た。

 事前に調べた何箇所のお店を回り始めた。


 いろんなシューズがあって目移りする。

 なかなか一つに決めれない……。

 とりあえずいろいろ見た方がいいとはっちゃんが言ってくれたので次のお店へ移動していた時だった。



「あ! 金子さん!」


 通り奥を歩く金子さんを見つけた。

 人混みに紛れそうになっている金子さんを私も見つけた。

 正直、会いたくなかったな……。

 そう思ったが、はっちゃんは金子さんに声をかけようと近付いていた。

 仕方なくはっちゃんに着いて行く形で金子さんの方へと歩き出した。



 ……と、横に女の人がいた……。

 その人は、お腹が大きく歩くのも大変そうだった。

 もうすぐ生まれそうな大きなお腹をさすりながら買い物をしていた。

 二人とも笑顔で楽しそうに買い物している姿は、幸せそのものだった。

 その横にいる女の人が奥さんだとすぐわかった。


 奥さん、妊娠してたんだ……。


 言ってくれればよかったのに……。


 でも、どんな顔して会えばいいんだろう……。

 はっちゃんが後ろから金子さんに声をかけ、振り向いた先に私もいる事に冷静にあいさつする中に焦りが見えた。


「あ……、こんにちは……。 二人で買い物……?」


 何だかぎこちない風に聞こえる……。



「こんにちは! そうなんです、買い物です。 もうすぐお子さん生まれるんですね! 知らなかった! おめでとうございます」


 私もはっちゃんの隣で一緒に挨拶をした。

 奥さんは綺麗な人で妊婦姿は優しさの塊みたいだった。



「……ありがとう……。 もうすぐなんだ……」



「お買い物、人も多いですから気を付けて下さいね」



「ありがとう……。 じゃあ、また……」


 奥さんも優しく会釈をして金子さんと歩いて行った。

 私は奥さんと対面し、汚れた自分をその場から消し去りたくて仕方がなかった。

 あんなに素敵な奥さんなのに、私は酷い事をした。

 家族という温かいものを壊す事は絶対にできない。

 新しく生まれる命だってある。


 はっちゃんと、金子さんの話で持ちきりだったが、正直何を話したかは覚えていない。

 私はきっと相槌を打つくらいしかできなかっただろう……。

 休憩に入ったカフェでスマホを開くと、金子さんからメールが来ていた。


「話がしたい。 夜、連絡するから」


 金子さんの幸せを壊せない。

 その話なんだろうな……。

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