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君の事なんて  作者:
13/65

視線

 始まった飲み会。


 吉岡さんという人は見るからに【いい人】が滲み出た様な人だったが、趣味が映画鑑賞とラジコンらしく、映画鑑賞は良しとして、ラジコンは私にはよくわからない分野の趣味だった。

 そのラジコンが趣味の彼女もいたらしいけれど、自然消滅していたと言っていた。


 ラジコンに大会があるらしく、そこで出会った彼女だったらしい……。

 その人以降は恋愛をしていないらしい。



「どんな人が好みなんですか?」


 吉岡さんからそう聞かれた。

 どんな人……。



「優しい人かな……」


 差し障りのない答えでみんながそう思っているであろう答え。

 模範的な事を言っておけばいいだろうと思った。


「優しい人なんだ。 他にはないの?」


 金子さんが更に話を広げて来た。

 どういうつもり……?



「他にですか……? 誠実な人ですかね……」


 それを聞いてどう思う?

 私たちは不誠実の上に成り立っている関係だけど……。



「萌ちゃんは、年上の人がいいと思うよーー。 萌ちゃんを甘えさせてあげれる人が合うと思う!」


 はっちゃんはそう思ってるんだ……。


 約3時間の飲み会がもう終わろうとしていた。

 私はいつもより少し多く飲んでいた。

 間をもたせる為に飲んだのと、この妙な緊張感が耐えられなかったのとをお酒でどうにか乗り越えようとしていた。


 はっちゃんが楽しければそれでいい。

 はっちゃんは、吉岡さんをどう思ったのかな……。


 お会計を済ませお店の外に出る。

 ここから家までは1駅、酔い覚ましに歩いて帰る事にした。


「萌ちゃん、次どうする?」



「あ、私、1駅だから歩いて帰る。 はっちゃん、電車?」



「……あ、私、吉岡さんとお茶して帰ろうかな! でも、歩いて帰るの危ないから、金子さん、一緒に帰ってあげてよ」


 はっちゃんの提案に焦る……。


「いや、大丈夫だよ。 ここからの道、ずっと明るいし……、金子さんも電車でしょ? 帰らなきゃいけないし……」


 静かなトーンで全力で断ろうとした。

 少しずつ距離を取ろうとしている時なのに……。



「あ、じゃあ、送ってくよ」



「いや、大丈夫ですよ! ほんとに……」



「夜だし危ないから」


 そうなるよ……。

 でもこれ以上断る事はできなかった。


 私たちは二手にわかれ、帰る事になった。

 大きく手を振るはっちゃんと吉岡さん。

 こんな状況になるならはっちゃん達とお茶に行けばよかったかな……。

 金子さんと普通に話せばいいだけなのに、こんなにも難しいと思ってしまう事になるんだ……。



「萌、熱大丈夫?」


 そう言われ、昨日断った事を思い出した……。

 そうだった……。


「うん……、もう大丈夫……。 金子さん、もういいよ。 一人で帰れる」



「ダメ。 一緒に帰ろう。 なかなか外、一緒に歩けないし」


 そう言って手を繋ごうとしたけど、サラッと避けた。


「それこそダメ。 夜だっていっても外でしょ。 誰かに見られたらどうするの……」



「じゃあ帰ったら離れないよ……」


 うちに来る気になってる金子さんをどうしたら帰せるかを考えていたが浮かばない……。

 もうこの関係は続けない、そう決めた。

 けれど、今の状況で別れようと言ってもまたうやむやになって元に戻ってしまう。

 もうそれはしたくなった。


 少しずつ、私から気持ちが離れて欲しい。

 今はその段階なのだ。

 慎重に進めたい……。


 うちに来たとしても求められたら生理だって断ろう……、そうするしかないと思っていた。



 それとなく会話を合わせ、歩いているとコンビニが見えた。

 買い物して帰ろうと、お店に近づくと店内に柏木さんがいるのが見えた。

 たぶん、家着のままプラっと来たんだろうな……という感じだった。


 私は瞬時に柏木さんにこの状況を助けてもらおうと思った。


「あ、友達がいる!」


 金子さんにそう言って店内に入り、柏木さんを見つけて声をかける。


「柏木さん! こんばんは」



「え? 永井さん!? どうしたの?」


 と同時に、私の後ろからやってくる男性に目をやった。


 あ、この人……。


 きっとそう思っただろうし、柏木さんの雰囲気が変わったのがわかった。

 軽く金子さんに会釈をした。



「少し先のお店で飲んでて、歩いてここまで帰って来た。 柏木さん、もう帰る? 夜道、危ないからって送ってもらって……おうちまでなんて申し訳ないから一緒に帰ってもらっていい……?」


 お願い……気付いて……。


 目で訴えた……。



「……あ、じゃあ……一緒に帰る?」


 気付いてくれた事に安心した。

 背中で金子さんを感じる。

 すぐには振り返れなかった……。


 コンビニを出て、金子さんとわかれた。


 どう思ったのかな。

 慎重に進めたかったのに、完全に何かを感じ取られてしまったよね……。

 金子さんと離れる事ばかり考えて、この後の事を考えれてなかった。

 わかれ際の金子さんと私の何とも言えなかった空気感……。


 後で何か言われそう……。

 遅かれ早かれこんな気持ちにはなる……。


 私は気付いてもらった柏木さんと歩き出した。

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