日本はなぜ米国と戦争したか?
いろいろとアレなんでアレなことになっていますが、御容赦お願いします。
昭和十六年十月、東京某所。
「現状を何とかする良い方法があるとお伺いしたのですが……」
「何とかする事は不可能ですが、最悪の事態だけは避ける方法があります」
「何をどうすればいいのでしょうか?」
「米国と戦争します」
「米国と戦争……、勝てる見込みがあるのですか?」
「無理ですね」
「そ、それでは戦う意味がないのではありませんか?」
「日華事変による財政悪化によって我が国はすでに敗北しています。ですが、敗北する相手を選ぶ自由は残っています」
陸軍がお気楽にも両手いっぱいの戦利品を持って帰るつもりで始めた日華事変の戦費によって、日本の国家財政はほぼ破綻が確定している。
ドイツがソ連に勝てない以上、いずれ英米の支援を得たソ連の反攻でドイツは敗北するだろう。ソ連が我が国に侵攻してくればもはや国家を守るすべはない。国庫に金がなければ戦争はできない。
「つまり……、事変による財政破綻後にソ連によって占領されるより、いっそ米国に占領された方がマシだとおっしゃられるわけですか?」
「ソ連には皇室を存続させる理由がありませんが、米国には皇室を無くす理由がありません。これだけでも米国に負けた方がマシですよ」
「もし、我が国が米国に併合された場合はどうなります?」
「併合してくれるのであれば米国の腸を内側から食い破ればいい。それだけの話です」
米国が民主主義の建前を放棄しない限り、一億人の読み書きができる少数民族という巨大な厄介ごとを抱え込むはずがない。
「陛下はどうなります?」
「日本で一番の名家の御当主様です。何か問題でもありますか?」
「我々が納得しても陸軍が納得するでしょうか?」
「ならば米国に陸軍を解体してもらえばいい。政府の命令に従わない軍隊なぞ百害あって一利なしです」
「ドイツはどう思うでしょうか」
「ドイツもソ連による単独占領は避けたいでしょう。そうなると米国と戦争せざるを得ない。表面的にはともかく本音では反対しないでしょう」
「そうですか……。他に方法はないのですね」
「おそらく」
「あなたは私に日本を滅ぼした男になれと言うのですか」
「嫌なら止めればいいでしょう。陸軍の不始末が原因ですから陸軍に責任を取らせればいい」
「……考えておきます」