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大人になって、僕はもう一度ジャミラを観た

作者: 川里隼生

 僕が子供の頃は、ちょうどテレビでウルトラマンが放送されていた。毎週日曜夜七時から始まる、三十分間のトワイライト・ゾーンを、全国の男子小学生が楽しみにしていたのだ。僕もその一人だった。レッドキング、バルタン星人、ダダ、そしてゼットン……。今でも怪獣たちの名前を思い出せるほど、当時はウルトラマンに熱中していた。


 そんな僕には、なぜだか忘れられない話がひとつある。ジャミラという怪獣が出てくる話だ。地球人で、宇宙飛行士だったジャミラが怪獣に変わってしまい、ウルトラマンに倒されるストーリーだった。怪獣が ——いや、彼が—— 標的にした国際会議場は、大阪万博のソ連館に似ていたような記憶がある。


 どうしてこんな話をしているのかというと、帰宅途中にレンタルビデオ店にふらっと立ち寄り、ウルトラマンの該当する話を見つけて、懐かしくなって借りてきたからだ。本放送からだいぶ時が経った。僕の物の見方も変わったもので、あの頃は気にもしていなかった着ぐるみのクオリティの低さばかりに目が行ってしまう。


 国際会議場は記憶と違い、ちらちらとしか映像に入っておらず、大阪万博のソ連館にも全く似ていなかった。記憶とは当てにならないものだ。そもそも、少し調べればわかったことだが、大阪万博よりもウルトラマンの放送が先だった。レッドキングもダダも、ウルトラセブンとしか戦っていなかった。ただ、ジャミラだけを子供の頃から忘れていない理由はわかった気がする。ジャミラは、あんな姿でありながら、人間によく似ているのだ。


 ウルトラマンが現れたとき、ジャミラはファイティングポーズをとった。口から火を吐けるのにも関わらずそれをせず、ウルトラマンの上に馬乗りになって首を絞めようとしていた。紛れもなく人が人と戦う動きだ。ウルトラマン登場の直前に弱点である水を浴びて、ジャミラは本能とも言うべき人間の思考に戻ったのだろう。そして人間の思考のまま、自分が人間だと思ったまま、ウルトラマンと戦おうとしていたのではないか。


 小学生の頃には考えもしなかったことを考えながら、僕の目はジャミラがいる不思議な世界を堪能した。絶対的な被害者でも加害者でもないジャミラが辿る運命は、ウルトラマンに倒される以外にありえなかったのか。大人の僕は色々な難しい思索にふけった。それでも、最後に心の底に残った感想だけは、小学生の頃と同じだった。やっぱりウルトラマンはおもしろい。

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