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一休み、路地の向こう

作者: 奈々


笑って別れを言おう。

「さようなら」はそのときのとっておきに。


それまでは「またね」を何度も伝えよう。

もう泣き顔なんて見飽きてきた頃かな。


大好きなんかじゃ足りないくらいに

君に夢中だった。


素敵な別れのために今を積み重ねていくのも

きっと、悪くはないよね。

_______________________________________



肌が焦げるような熱い夏

体感気温は40℃になると言われる猛暑。

ニュースでは殺人並みの暑さだと報道されていた。


せっかくの休日だからと、家を出てみたものの

目的もなくただ歩き続けるだけ。


最近では仕事で成績も伸び悩み、ミスも多い。

同期や上司とも上手くいっていない。

正直言って、人間関係を築くのは苦手だ。


そんな憂鬱さに負けてここ数ヶ月の休日は

家にこもり、ただ時間が過ぎるのを待っていた。

このままでは、ただ落ちていくだけだ!

と、自分を奮い立たせたものの…。


仕事ばかりで休みの日に何をしたらいいのかわからない。まるで定年退職を迎えたおじさんだ。


そんなことを考えていながらも、さすがにこの猛暑

喉も渇いてきた。

グッと冷たい水を飲んで日陰で休みたい。


とぼとぼと住宅街を歩いていると

小さな扉に小さな看板。

コーヒーあり〼

の文字が視界に入った。


休めるならどこでもいいか。

そう思い、扉の向こうを覗き込む。


そこには路地が続いていて、見るからに人の家。


ここはカフェなの…?


恐る恐る路地を進むと【入り口はあちら↑】と

道案内があった。

それに従い進むと縁側らしき場所にたどり着いた。


ガラガラガラっと扉が開き

猫の鳴き声と一緒に一人の男性の「いらっしゃいませ」が私を迎えた。


居間らしき場所の奥にはカウンターと椅子が並んでいた。


「あ、失礼します…」


靴を脱ぎ縁側へとあがる。


「お好きなお席へどうぞ」


男性は、どうやらここのマスターらしい。

シンプルな柄のワイシャツにベストを羽織り

如何にも、お洒落なカフェのマスターだ。


世に言う町家カフェなのだろう。

クーラーが効きとても涼しい。

私とマスターしかいない店内をぐるっと見渡した。


心地いい静寂が迎えてくれた気がした。


居間に入りカウンターに腰を掛ける。


「なににしましょうか。」


「そしたら…コーヒーをお願いします。」


「ホットにしますか?アイスにしますか?」


「ホットで。」


「かしこまりました。」


そう言いながらマスターはコーヒーの準備を始めた。


お湯を沸かし、その間にコーヒーミルでコーヒ豆を砕く。フィルターを用意し、お湯が沸くとコーヒーカップを温めた。


少しお湯の温度が下がるのを待ち、コーヒーを淹れる

ふつふつとフィルターに入ったコーヒーが膨れ上がり、10秒ほど待つ。

コーヒーの匂いが漂ってくる。


十分にコーヒーを蒸らしてから、

円を描くようにお湯を注ぐ。


ちょろちょろちょろ….っと落ちていくコーヒー


心が微睡むとはこう言うことなのかな。

ここ最近の嫌なことを、すーっと溶かしていく。


「はい、お待たせいたしました。」


お洒落で可愛らしいコーヒーカップにベストな温度のコーヒー。


「いただきます」


少し猫舌な私には熱いが、苦味の中に甘みを感じる。

なんて美味しいコーヒーなんだろう。


クーラーが効いていて汗はだいぶ引き

少し寒くなっていたせいか、体がホット暖まっていく。


「とても、美味しいです。」


その言葉と一緒にコーヒーの蒸気で目にいっぱいの水滴ができたみたいに視界を滲ませた。


「それは、よかった。」


マスターがそういうと、

私の顔を心配そうに覗き込む。


「泣くほどに美味しいか?」


関西なまりの心地の良い言葉が私の胸に入ってきた。


「はい…」


それを皮切りに、思わずここ最近のことを零した。

誰にも話したことのない本音まで出てきてしまった。


マスターはそれに優しく相槌を入れながら時折

アドバイスをしてくれたりもした。


自分らしさってなんだったろう。

会社の人間として、上司の部下として、同期として

"誰かの自分像"を受け入れ応えるようにしてきた。


"誰でもない、ただの一人の人間"で

いられる気がした。


それは、コーヒーが私の中の誰かを解放しているようで「素」でいられる気がした。


マスターと私以外には人はこなかった。

3時間ほどたち、気づけば日が暮れていた。


まるで膿が出きったような気分だった。


「また、いらっしゃいな。」


マスターの優しさとコーヒーが私の心を満たした。


それから、週末になると私はカフェに通うようになった。

次第に常連さんとも顔を合わせるようになり

誰かの求める私ではない時間を過ごした。


ここの常連さんも

また、私と同じような気持ちなのだろうか。

なんて、考えてしまう。


美味しいコーヒーとマスターの優しさが

そっと、迷子の大人を呼んでるかのよう。


____________________________________


一緒に暖かいコーヒーはいかがでしょうか?

最後までお読みいただきありがとうございます!


ある町家カフェに迷い込んだとき、マスターに愚痴をこぼす女の子を見て勝手に想像した作品です。笑


実際に、そこのカフェのコーヒーはとっても美味しかったです!忘れられない味ですね。


ラブストーリーを書きたいと思いながらネタ不足。コーヒーネタは大好きです。


毎日のコーヒーの中に物語を想像しながら過ごす日々。

拙い物語ですが、よろしくお願いします!


と、なんと物語が途中で切れてしまってました笑

また、改めて書きます…

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