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第45話  アシュラの実力(★)


 「さっさと荷馬車ごとズラかるぞ!!」


 「「「「へぃ!!」」」」


 男性を殺害した5人の盗賊は、荷馬車に乗り込むと即座に逃走した。


 程なくしてアシュラ達が犯行現場に辿り着く。

 まだ荷馬車の後部が視認できる為、まさに入れ違いのタイミング。

 追えばすぐに接触できる距離だったのだが、アシュラは馬を止めた。


 「アシュラ、どうしたの? 今ならすぐに追いつけるのに……」


 「……血の匂いがする」


 アシュラは匂いがする方向をじっと目を凝らす。

 そこには行商人と思わしき人物の亡骸が、無残にも晒されていた。


 「うぇ……これは酷いわね」


 「うぅ……お、お尻が4つに割れてるのですぅ……」


 「驚くところそこなの!?」


 ククルのズレた観点に思わずツッコむフォルテュナ。

 まさに阿吽の呼吸を心得ている2人である。


 《盗賊の仕業だな。行商人の荷馬車を襲撃して強奪したんだろう》


 「それじゃあ、あの走り去る荷馬車は……」


 《元々、その男の所有していた荷馬車だろう》


 「そっか、だったら尚更放っておけないな」


 「え、アシュラ!?」


 「あれ? アシュラさん!?」


 アシュラは驚くフォルテュナ達に構わず、単独で男達を追いかけ始めた。


 《……随分といきなりだな?》


 「ごめん。でも急がないと、おそらく人質がいるっぽいんだ」


 《そんな事がわかるのか? 私の気配探索じゃそこまでの精度は……》


 「わかんないけど、わかるんだ!」


 《くふふっ、朧気だがアシュラの固有能力の片鱗が見えた気がするよ》


 「片鱗!?」


 《そんな事よりも、まず盗賊を始末しようじゃないか!》



 *****



 一方、男達は追手(アシュラ)が来ている事をすでに察知していた。


 「アニキ、マズいですぜ! このままじゃ追いつかれちまう!!」


 「慌ててんじゃねぇよ。相手は1人だろ」


 「へ、へい。見たところ黒髪のガキみたいですぜ」


 「正義ぶった若造ってか。殺して小銭稼ぐとするか」


 アシュラが追いつきそうなところで、大男は突然荷馬車を減速させた。


 「うわっとと!?」


 急な減速に、アシュラは追突しそうになって慌てふためいた。


 《アシュラ、馬を寄せ過ぎだ。不用意に近づくのは禁物だぞ》


 「ごめん。飛び乗ろうと思ってつい」


 《猪突猛進は嫌いじゃないが、今は状況判断してから動くべきだぞ》


 カーリーから注意を受けてる間に、荷馬車から大男が降りてきた。


 「おぃあんちゃん、俺達に何か用事でもあるのかい?」


 大男はアシュラを見下した態度で迫ってきた。

 だがアシュラはそれに対して、全く怯む様子はない。


 「あなた達が乗っていた荷馬車をお返しいただこうと思いましてね」


 「お返しいただくだぁ? 笑わせんな小僧! これは俺の荷馬車だ!」


 大男は大声を張り上げ主張を押し通してきた。

 そしてその右手は鞘から剣を抜かんばかりに柄を握りしめている。


 「俺の荷馬車……ですか? ()()()()()()()()()()から、護衛を任された際に確認した荷馬車と全く同じなんですよね。これだから先に行くなと釘を刺しといたのですが……でも前金は頂いているので、きっちり仕事はさせてもらいますよ」



 もちろん、これはアシュラの咄嗟に出たハッタリだ。

 相手は野蛮な盗賊とはいえ、そこまで馬鹿な連中ではない。

 犯行に及んだ証拠がなければ、幾らでも誤魔化せるのだ。


 アシュラは自分が『置いていかれた護衛』であると言い張った。

 要は殺された男と荷馬車を、直接見て知っていると思わせればいいのだ。


 嘘でも本当だと思わせる策は、母ミテュラ直伝の交渉術である。

 それでもミテュラが見れば「まだまだね」とでも言いそうだが。

 しかし動揺した大男には効果てき面であったようだ。


 「ちっ……まさか護衛がいるとは想定外だったな。てめぇら!!」


 「「「「おぅ!!」」」」


 荷馬車の陰から4人の手下が武器を持ってアシュラを囲ってくる。

 そして大男はニヤニヤしながらアシュラの身体を舐め回すように見ていた。


 「……ほぅ、よく見てみりゃいいもん装備してんじゃねぇか。持ってるもん全部置いてきゃ、悪いようにはしねぇ。こちとら5人だ。勝てるなんて考えない方が身の為だぜ?」


 多対一という事もあり、すでに大男は勝った気でいる。


 《盗賊って馬鹿ばかりだな。さっさと片付けよう》


 カーリーは自分の声が聞こえないのをいい事に、言いたい放題だ。


 (そうだね、幸い人質だと思った人達にも気がついてないみたいだし)


 《やっぱり居るのか? という事は荷馬車に身を潜めたままなのか》


 (多分ね。だからさっさと片付けよう)


 アシュラは馬から降りると、両腰の鞘に収まっていた双剣を抜く。


 「相手がひとりだから楽勝、なんて思うのはどうかと思いますよ?」


 「調子に乗るな小僧ぉ!!」

 

 斧を構えた男が大きく振りかぶり、アシュラ目掛けて振り下ろす。

 だがそんな力任せではアシュラと捉える事などできない。

 アシュラは無駄な動きを最小限に抑え、紙一重で躱した。


 「なんだと!?」


 「そんな大振りの一撃、当る方が難しいですよ」


 そう言うと、斧を振り切った男の腕を、左手の双剣で難なく両断。


 「ぎゃああああああぁぁぁ!! 俺の腕がああああぁぁぁ!?」


 のたうち回る男をよそに、アシュラは怯んだ手下達へと殺気を当てる。


 「ひぃ!?」


 短刀を持つ男はアシュラの殺気に怯み、後ずさりした。

 アシュラはそれを見逃すようなヘマはしない。

 低く屈んだ体勢から、下半身のバネを使って、瞬時に距離を縮める。

 短刀の男は、彼が懐にまで潜り込んできた事に気づいてもいない。


 「襲われる人の気持ちになった気分はどうですか?」


 そう囁くと、今度は短刀を持った男の両腕が、空を舞った。


 「うぎゃああああっ!! 俺の腕が……腕がああぁぁ!!」


 斧の男と同じ台詞を吐くと、短刀の男は泡を吹いて倒れてしまった。


 「ば……化け物がぁ!!」


 「死ねえぇ!!」


 左右から残った手下が襲い掛かる。

 右から槍使いが、そして左からは魔法師らしく、詠唱を始めていた。

 アシュラは槍の連撃を双剣で受けるでもなく、ただ回避に徹する。


 「我が声に耳を傾け応えよ火の精霊、この手にその力を分け与え給え!」


 《なんだか大仰な詠唱だな……どんな火魔法だ?》


 「くらえぇ『火の矢(ファイヤアロー)』!!」


 《まさかの初級魔法だと!?》


 矢を模った炎が、アシュラの左側に襲い掛かる。

 しかしアシュラは敢えてそれを狙っていた。

 右側から襲い掛かる槍使いの連撃を、彼はスレスレで躱した。

 勢い余った槍使いは体勢を立て直そうとその場に踏ん張るが……


 「「あ」」


 至近距離で放たれた『火の矢(ファイヤアロー)』が、立ち位置の入れ替わった槍使いの顔面に直撃。

 そして槍使いの槍先は、魔法使いの胸元へと深く突き刺さった。

 仲間同士で攻撃し合った結果、2人はその場に倒れた。


 《あの長ったらしい詠唱で初歩魔法とは驚いたな》


 この世界で、魔法を使う人族は数少ない。

 その為、魔法に関しては他種族に比べ、全く足元にも及ばないのが現状。

 詠唱もまた同様で、各自のイメージ力を補う為の補助動作でしかない。

 すなわち、決まりきった詠唱ではなく、各自の考えたものなのである。


 カーリーが驚いたのは、その為であった。


 「仲間は皆倒れましたよ。貴方こそ投降したらどうですか?」


 アシュラは大男に向けて警告するが、投降するつもりはないようだ。


 「……ふん、回避に特化してる程度でいい気になるんじゃねぇぞ!!」


 「わかりました、なら俺も容赦しません」


 相手は曲がりなりにも4人の男達を従えていたリーダー格の男。

 アシュラはほんの少し警戒レベルを上げる。

 再び体勢を低くとり、双剣を構えたその時、脳内にクロの声が響き渡った。


 『兄弟、暇だから俺にも攻撃参加させてくれや』


 「えっ?」


 アシュラの心臓がドクンと高鳴る。

 クロの精神から流れてくる感情の奔流が、アシュラの精神を呑み込んだ。



2020.4.12 改稿しましたm(__)m


内容としましては、わかりにくい説明を修正・加筆しました。

次回に繋がる最後の文章は新しく加えました。


いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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