第90話 商会へ
「じゃあ、僕はクラール商会へ行ってみるね、マイ先生とアイリはどうするの?」
一度降ろした荷物を再度、肩にかけながらソーンが部屋で寛いでいる2人に声をかける。
それには、手元で開いていた分厚い本を閉じながらマイが答える。
「気を付けてねソーン君。私は街中の遺跡をちょっと見ておきたいかな」
そう言うと、アイリの方に目線を向ける。
「ん、あぁ。そうね暇だからいいわよ。ついでにお店をぶらぶらと周ってみたいから一緒にお願いできるかしら」
ちなみに、クーマはというと、部屋が決まると早々に大量の果物をもって空へと消えていった。
お互いの予定が確認できたところで、部屋の扉がドンドンとならされる。
ゆっくりと開いた扉から、2人の幼馴染が顔をのぞかせる。
「・・・なんだか楽しそうね。そろそろ出発してもいいのかしら」
そういってミリアがじっとソーンの顔をうかがっていると、押しのけるようにアルフが部屋に入ってきて言った。
「ソーンの護衛はボクの役目だからナ、アイリ達は安心して自由にしてていいヨ」
それを受けてアイリが答える。
「それは安心ね、まあソーン君とミリアちゃんのことはアルフに任せて、あたしはマイと街を散策してるわね」
大きく頷いているアルフに近づいて、ソーンが照れたように答える。
「えーと、僕もアルフとミリアが困ったときには助けられるくらいには、最近鍛えてるからね、そのなんていうか・・・」
「ん、ソーンも護衛したいのか。じゃあボクとソーンでミリアを護衛だナ、でも護衛隊長はボクだから、そこは間違えないようにネ」
ソーンの手をひいて、ミリアのそばに駆け寄ったアルフが2人の肩に手をかけて笑いながら答えた。
___クラール商会の場所は、宿の女将さんに聞いていたので、迷わずにたどり着けそうだ。
宿をでて、若木通りを戻る方向に進むと大通りを挟んで反対側の通りに入った。
こちらは主に商店が連なる通りで、この奥に目的地はあるそうだ。
通りを進む中で、剣の形の看板がかかったお店や、店先に大小さまざまな壺を並べているお店、結構大きめの肉の塊が吊るされている肉屋も目についたが、
奥に進むにつれて、色とりどりの布を掲げる生地屋や、山盛りの果物と野菜を並べたお店、とてもいいにおいを漂わせている串焼きの店などが見えた。
そのまま進んでいくと、あるところで、人通りも急に増えていることに気づいた。
「えーと、この開いた門のところにある印章が目印でと。んー、この中とは思うんだけどなぁ」
少し不思議そうにソーンが考えこんだのは、大きな門があると聞いてはいたが、その門の両脇にも出店が並び、美味しそうなパンのにおいが漂っている。
門の中をのぞくと、そのまま石畳の道がつづく先にもずらっと屋台のような店が並び、あまりみたことのない種類の野菜や果物と、魚の干物が並んだ屋台や、スープのようなものを煮詰めているお店もあり、さっきからとても良い香りが漂いお腹が空いてきて困ってしまう。
「いいんじゃない、別に時間を決めているわけでもないし、ちょっと食事していきましょう」
そういって、ミリアがソーンの背中を押して、一番美味しそうな香りがするスープのお店へと歩を進めていった。
「ボクはさっきの串焼きも興味があるゾ、ソーンはどれが食べたいんダ」
鋭い目線のアルフが品定めをしながら、獲物を指さしてソーンにたずねている。
「じゃあ、見える範囲で手分けして調達しようか、それで。えーとそこの噴水前で集合ということで」
目的地の寸前で、予期せぬ食事が開始されたがこれもクラール商会の思惑通りだとすると中々手ごわいなぁと心の中で呟くソーン達一行であった。
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