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第82話 大きな木の下で

「えーと・・・本当に大丈夫でしょうか」


不安そうなソーンの言葉に、マイが即答する。


「いいんじゃない、折角だし、試してみましょ」


つづけてミリアも答える。

「そうそう・・・このままって言われても困るし」


___馬車の荷台に慌てて3人で駆け込んだ後、

しばらくは声も出さずにじっとしていたが、


 直ぐに静かな時に、耐えられ無くなって、そーっと、御者台へとつづく幕の間から外を窺って、先ほどの会話へと至る。



 馬車の外の少し離れた場所から、耳に残る不快な羽音が聞こえてくる。


 羽を大きく開いた鷲くらいのサイズの巨大な羽虫が辺りを警戒するように、地面から浮いて移動している。


 改めてその姿を見て、肩をすくめて、みるからに嫌そうな顔でミリアが答える。

「うわっ、あんなの居るの、都会は怖いのね。ソーン一発で仕留めてよ」


「やっ、それはどうだろう、やっぱりマイ先生にお願いしたほうが、僕は近づいてきたらコレで叩き落とす役で」


 それには、すぐにマイが反論する。

「えー、それじゃあ折角の実戦訓練にならないじゃない、ソーン君さくっと唱えちゃってよ」


「えっ、訓練なんですか?突然襲われてるだけですよね」


「まあまあ、いいじゃない、危なくなったらフォローするから」


 そういって、両手のひとさし指で獲物へ向けてアタックするように、指示をするマイ先生に、困惑しつつもうなづくソーンが一応の確認をする。


「えーと、じゃあ先ほど教わった術で、何本くらいをイメージするといいでしょうか」


それには、少しだけ真剣そうにマイが答える。


「そうね、まだ慣れてないのもあるし時間かかるけど念のために3本イメージして見ようか、途中で見つかったら構わないからその時点で撃ってね」


「分かりました、見つからないように祈っておきます」


つづけて、興奮したようにミリアが答える。

「じゃあ、危なくなったら幕を閉じる役はアタシね、はずした後はどうするソーン」


「えーと、巧く当たるように応援してほしいけど、そうだね、ヒメと相談して、馬車の近くまできたら糸で捕らえてくれるって」


 念のためにもう一度ソーンが、木の上にいるであろう白大蜘蛛ユキヒメに念話で確認すると返事があった。


『・・・ん。準備できてる、安心してイイ』



___丁度、巨大な羽虫モスキートが違う方向へ向きを変えた隙に、そっと御者台へと移動したソーンが、棍棒を持ってない方の手をあげて、素早く唱えた。


ハンエーヤン


 すると、炎で燃えさかる矢が手の上に出現しゆらゆらと浮いている、そのままの位置で更にもう1本同じく矢が現れる。


 流石に距離があっても、その熱量を察してか羽虫が気づいてこちらに襲いかかってきた。


「・・・もう1本・・・よしっ、これで当たってくれればッ」


 3本の燃えさかる矢が、あと数歩のところまで接近していた羽虫に向かって急襲する。


 1本目は接近により一層ブーンと耳障りな音を発生している羽をかすめていったが、残りの2本が腹部に炸裂して、激しく燃え上がり、もがくようにして羽虫が地面に落ちた。


 焦げた臭いが辺りに漂う中、ピクピクした動きが止まったのを確認してから、ソーンは仕留めた獲物に近づいた。


 手にした棍棒でつついてみたあと、念のために頭部をえいって潰しておいた。


 その様子を馬車の中で見ていた、マイが呟く。

「ふぅーん、ソーン君、結構適正あるんじゃない、3本目が出現するまでの時間も早かったし、威力も十分・・・それに以外と度胸もある・・・」


 間に合わずに2本目で撃つだろうとマイは思っていたが、想定以上の結果に感心していた。


 その間に馬車からミリアも駆け寄ってきてソーンと話をしている。


「・・・この羽とか、針みたいなこれも素材で売れるんじゃない。ドロドロしてる部分はちょっと切り離して・・・あっなんか石がある」

 羽虫とは距離をおいていたような気がしていたミリアの対応に、ソーンは苦笑しつつ、しっかりものの幼なじみの指示の元、切り離して回収していく。



___以降は平和に時が過ぎていき、そろそろ日も落ちるかなという頃になって、半日ぶりにこちらに駆けてくるアイリ達の姿をとらえた。


 荷物を担いだ状態で、あきらかに急いでいる様子に何かを察して、

ソーン達が駆け寄る。


「おかえり、アルフ、アイリさん。でもどうしたのそんなに急いで」


 手にした荷物を受け取るソーン達と共に馬車へと向かいながら、アルフが答える。


「ちょっと、街の外で怪しい動きを見た。今日はここでの野営を中止して、不本意だけど先を急ぐのがイイと思う」


それにあわせてアイリが答える。

「街道沿いにキャラバン用のキャンプ地があるそうだから、そこまで移動しましょう。暗い道でもヒメは大丈夫かしら?」


あわててソーンが確認すると、木の上から降りてきたヒメがうなづいた。


『・・・ん。寧ろ夜道の方が得意・・・』

と、そのまま、ヒメがアルフとアイリの近くにきて、前足をぶんぶんとふっている。


 それを不思議そうに見ながらソーンが尋ねる。

「どうしたのヒメ。何してるのソレ?」


『・・・変なのつくのダメ・・・コレでイイ』

 納得したのか、解放されたアルフとアイリも不思議そうな顔をしている。おまじないか何かだろうか。



 その後、買い出しの荷物を積み込む際に、アイリが申し訳なさそうにクーマに果物が買えなかったことを告げると、珍しく問題無いと答えが返ってきた。


なんでも昼間にソーン達が仕留めた獲物からでた石を貰ったそうで、前菜に丁度いいと言いながらご機嫌で石を口の中で転がしていた。



___あわただしく合流を果たした、アルフとアイリにお互いの情報を交換しつつ、出発準備を終えたソーン達は、


 暗くなりはじめた街道を進みだした。

いつも読んでくださりありがとうございます。続きも読んでいただけると嬉しいです。



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